ゲアリー・マーカス(著), 鍛原多惠子(訳), 脳はあり合わせの材料から生まれた それでもヒトの「アタマ」がうまく機能するわけ

進化論では生物の進化は漸進的なものであり、手元の材料にその場凌ぎで新たな機能を継ぎ足し続けた (いわゆるKludge) 結果が現在の姿であるとされる。もちろん、人間の脳も例外ではなく、最初から完成形を想定して設計されていたのならばあり得ないような構造が多数見られる。

本書は、その様な非合理な脳の設計を進化心理学の立場から解き明かしたもの。人間の記憶、選択、言語、快楽など、ありとあらゆる機能が、進化の歴史的経緯によって大きく歪められていることがよく分かる。また、巻末にはその脳といかに上手く付き合っていくべきかという処方も述べられており、こちらも興味深い。

近年の脳ブームに乗って乱造されたような本ではなく (翻訳の後押しにはなっているのかもしれないが) 、本物の研究者が誠実に書いた本であり、きちんとした科学書を求める向きにもお勧めできる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました