アビゲイル・アリング(著), マーク・ネルソン(著), 平田明隆(訳), バイオスフィア実験生活 史上最大の人工閉鎖生態系での2年間

1990年代前半、アリゾナの砂漠に作られた閉鎖生態系での生活の様子を描いた作品。一般向けの啓蒙書なので、科学データよりも実際の生活寄りの話題が中心。

本書の主題となっているバイオスフィア2 (バイオスフィア1は地球そのものを指す) は、わずか1.2ヘクタールの土地の中に、熱帯雨林、サバンナ、砂漠、湿地、サンゴ礁のある海、農地などを詰め込み、(エネルギーと情報以外は) 外部から完全に隔離された環境で、8人の科学者が2年間の生活を試みるもの。

リアルな生活の様子として描かれる毎日の農作業や、それでも解決できない空腹などの諸問題は、完全なハードSFとして読んでも楽しめるレベル。予想外の酸素濃度の低下に対し同位体を用いた追跡により原因を特定していく流れなどはヘタな小説よりも面白い。

残念なのは、本来は生活するメンバーを入れ替えながら100年間継続する予定であったプロジェクトが、主に資金面の理由で3年目にして頓挫してしまったこと。元々公的なファンドによるものではなく、個人の資産家に支援されていた研究だったため仕方がない部分があるが、返す返すも残念でならない。

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