John Dewan, The Fielding Bible

著者の欄にはJohn Dewanの名前しか書かれていないが、実際にはBill Jamesが大きく関与している。

実は野球の守備に関する統計は、ここ130年ほど進化していなかった。すなわち、試合数、刺殺、補殺、失策、守備率といった野球の黎明期に考えられた指標が惰性で使われ続けてきた。本書は、それらに代わる新たな守備指標を整備しようという野心的な試み。主に以下の4つの指標が用いられる。Relative Range Factor以外は地道な画像分析を基に算出した数値なので個人で検証するのは難しい。

まず初めにPlus/Minus System。全打球の方向 (Vector) や速さ (Velocity) を記録しておき、50%未満の確率でしか処理されなかった種類の打球をどれだけ処理できたか (Plus) や、50%以上の確率で処理された打球をどれだけ取りこぼしたか (Minus) を数値化したもの。要するに、同じ様な性質の打球を、同ポジションの平均的な選手に比べていくつ余計に処理できたかを見る。守備能力を測る上で優れた指標ではあるが、バント処理や一塁手の捕球技術などは対象外となることに注意が必要。

続いて安打の場所の統計。例えば遊撃手の場合は、内野安打 (infield hits) 、センター前 (up the middle) 、三遊間 (in the SS/3B hole) 、遊撃手と左翼手の間 (in short left) の安打の合計の多寡によって評価される。もちろん、これは投手や近隣のポジションの選手の能力に左右される数値なので、個人成績と言うよりはチーム単位での評価に適している。

三つ目はRelative Range Factor。1976年にBill Jamesによって提唱された指標で、イニングあたりのアウト寄与数を集計したもの。この指標の利点は何と言っても伝統的な刺殺や補殺の値から算出できるため、映像が残っていない過去の選手にも適用できるという点。以前より、投手の奪三振率の影響を受ける、ゴロ/フライ比率の影響を受ける、投手や打者の左右の影響を受ける、といった欠点が指摘されているが、本書ではそれらの影響を緩和する案も示されている。

最後にZone Ratingsは、本書の主筆でもあるJohn Dewanが1980年代に提案していたシステム。Plus/Minus Systemに近い考え方ではあるが、各打球の方向や速さ別にPlus/Minusを積んでいくのではなく、各ポジションのゾーン内に飛んできたボールの処理成功率を用いる。

もちろん各指標の説明だけではなく、メジャーリーグの主要な選手のデータがほぼ網羅されているので、データを眺めながらニヤニヤできる人には間違いなくお勧め。

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