佐藤優, いま生きる「資本論」

読む順序が逆になってしまったが、いま生きる階級論の前著。

1930年代の日本資本主義論争まで遡った資本論の読み方を説く。天皇制の打破による日本の資本主義社会化の後に社会主義革命を目指す講座派と、すでに権力の実態を持っている財閥を即座に打破する社会主義革命を志向する労農派。それらの対立が資本論の読み方に強い影響を与えている。

人生を楽にするために資本論を読もうという提案も興味深い。資本主義のからくりを知ることは、資本主義社会の中で自分の置かれた状況を客観視することにつながる。資本主義社会は競争の中に入ってしまうとトップの一人しか満足できない仕組み。この仕組みに巻き込まれないためには、状況を正しく捉えた上で資本主義社会の抜け道を探すしかない。

資本論の論旨は明快。労働者の賃金は資本家からの分配ではなく、生産論で論じられる。すなわち、 労働力は商品に過ぎず、会社がいくら儲かっても、それが労働者へ流れることは原理的にない。これを理解すると、「企業の内部留保が増えているのだから、その内部留保を賃金に回せ」というのがいかに暴論か分かる。賃金は内部留保の前段階で決着している。賃金を上げる方法として、代替可能なコモディティではなくスペシャリスト (熟練労働者) になる道を指南する本が良く売れている。

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