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奥山真司(監修), ビジネス教養 地政学

イラスト多めの地政学入門書。本当のさわりの部分だけなので、普段からこの分野のニュースを追っている人には得られるものが少ないかもしれない。
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高橋洋一, 統計・確率思考で世の中のカラクリが分かる

全体の半分ほどの分量を占める第1章は表題通りの統計・確率の話。こちらはベイズ確率、標本、シミュレーションの基本、第一種過誤と第二種過誤など、よく誤って使われている言葉を広くカバーしている。 後半は統計・確率とはほぼ関係のない東電問題や自身の政策の話で、やや寄せ集め感がある。
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パトリック・ファーガン(著), 上原裕美子(訳), #HOOKED 消費者心理学者が解き明かす「つい、買ってしまった。」の裏にあるマーケティングの技術

マーケティング本だが、最近の脳科学の成果を取り入れているのがミソ。感情的で不合理で限られた認知能力しか持たない人間の脳を前提にすると、今までのマーケティングのあり方が大きく変わってくる。すなわち、プリミティブで感情に訴えかけるメッセージをサプライズと共に与え、自分ごとと思わせる必要がある。 この本の表紙も感情をわしづかみにする子猫の画像と意外性のある色使いでデザインされているのが見事。
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小島庸平, サラ金の歴史 消費者金融と日本社会

戦前から現代にいたるまでのサラ金や消費者金融の歴史を辿ることで、金融技術の発展やサラリーマンの実態、ひいては日本の経済史までもが見えてくる。 銀行などの金融機関から金を借りたくとも借りられない人々向けの高利貸の歴史は長く、戦前は個人間の資金貸借が盛んに行われていた。これがサラ金の源流と言える。とはいえその実態は素人高利貸に過ぎず、現代のサラ金に直接繋がる勢力が生まれるのは、戦後の団地金融を待たねばならなかった。 その団地金融の代表格が1960年代から1970年代にかけて消費者...
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高井浩章, おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密

お金のことをよく知る不思議な人物が一般人にレクチャーする系のマネー本。 あまりガツガツとした金儲け系ではなく、子供向けの社会教育を意識しているのがポイント。
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北野一, デフレの真犯人 脱ROE〔株主資本利益率〕革命で甦る日本

やたらと例え話が多くかえって読み辛いが、内容は頷ける部分が多い。 日本のデフレの原因を、グローバル化した株主が世界共通で求める利益率 (ROE) に求めている。この期待ROE (企業側から見ると株主資本コスト) の高さが実質的な金融引締となってデフレを招いているとの論。
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山口揚平, 知ってそうで知らなかった ほんとうの株のしくみ

株式投資の入門書。 素朴なファンダメンタルズ寄りで、個別株投資、特に小型割安成長株投資によりキャピタルゲインを得ることを推奨している。ただし、提案している投資手法の実績やエビデンスは示されない。また、推奨するしないはともかくとして、初心者向けの入門書でインデックスファンドを紹介すらしないのはいかがなものかとは思う。 それでも、有価証券報告書の読み方などをきちんと解説しているのはまだ良心的。また、原因-結果と過去-将来の2軸で企業を評価する因果のマトリクス、投資家のスタイルを分...
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ジョン・ケネス・ガルブレイス(著), 鈴木哲太郎(訳), [新版] バブルの物語 人々はなぜ「熱狂」を繰り返すのか

バブルを引き起こす陶酔的熱病 (ユーフォリア/Euphoria) は繰り返し起こる現象であり、それから身を守るのは集団的狂気へ突っ走ることに共通する特徴の認識であるとと説く。それは具体的には、金融の天才の登場であったり、てこ (レバレッジ) の再発見であったり、何か新奇らしく見えるものであったりする。古典的なケースであるチューリップ狂やサウスシー・バブルでもこれらの特徴が見られる。 本書は徹頭徹尾、警告の書として書かれている。金融上の記憶は高々20年程度 (新しい世代の人が舞...
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合田真, 20億人の未来銀行 ニッポンの起業家、電気のないアフリカの村で「電子マネー経済圏」を作る

日本植物燃料株式会社を創設した合田真の自伝。 細かいビジネスの話の前に、"新しいお金のものがたり" と称する新たな経済構造の仕組みを提案しているのが興味深い。歴史上散見される金利の禁止が、現代のような資源制約期 (原油生産量がピークを迎えている) では合理的だと論じる。この思想が複利で稼ぐのではない収益分配型モバイルバンクのビジネス立ち上げにつながっている。
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ヤニス・バルファキス(著), 関美和(訳), 父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。

ギリシャの元財務大臣による経済入門書。子供向けと言うほどやさしくはないが、大人が経済の歴史を整理するのには良いと思う。 著者の予想する市場社会の未来図は興味深い。自動化、競争がコストを押し下げ、また自動化を進めるロボットは消費者ではないため需要をも押し下げる。その結果として価格が製造コストを賄えない水準まで押し下げられる。こうして起きる経済危機はマルクスの予想とも一致する。 第二次世界大戦中の捕虜収容所で生まれた経済の事例も興味深い。腐らず長持ちし持ち運びが簡単でその魅力が共...