fiction

book

外山薫, 息が詰まるようなこの場所で

この部屋から東京タワーは永遠に見えないに続いてタワマン文学をもう一冊。資産家とサラリーマン、そして地権者と、タワマンに住む3種類の人々を切り取っている。文学としての質はともかく、現代の都会の人々の嫉妬心を揺さぶる要素がこれでもかと詰め込まれており、バズるのがよく分かる。
book

麻布競馬場, この部屋から東京タワーは永遠に見えない

twitter生まれの虚無小説。短編集だが、勉強ができる子が背伸びして上京して東京に敗れるという一貫したテーマが流れている。こういった作品が生まれるのはtwitterしかありえないと思わせる。FacebookやInstagramではこうした文学が生まれることは決してないだろう。
movie

老後の資金がありません!

ほぼ同名の小説の映画版。家内が大ファンの松重豊が主演ということで一緒に視聴。服装のおかげか珍しく五郎さんに見えない松重豊に驚く。終盤の超展開もこうしてみると映画向きだったと思う。
book

スミス・マガジン(編), 越前敏弥(訳), Six-Words たった6語の物語

Six-Word Memoirsをまとめた本の和訳。Webサイト以外にTwitterのアカウントも運用中 (日本語版もある)。 帯には "英語版Haiku" とのキャッチコピーが踊るが、これはなかなか言い得て妙。フィクションだけというわけではなく、短詩のような作品も多数含まれている。
book

浅田次郎, ハッピー・リタイアメント

天下りをテーマにした娯楽小説。天下り官僚の生態をユーモアたっぷりに描くところはさすが。堅物の自衛官との対比も良い。オチも秀逸。
game

Florenc‪e‬

iOS版のFlorenc‪e‬をプレイ。 ゲームと言うよりはアートと言ったほうが近いかもしれない。パズルを心理表現の道具としているのは新鮮。一本道シナリオでボリュームも控えめだが、読後感が良く十分に満足できる。
book

新庄耕, 地面師たち

今作のテーマは地面師。明示的には書かれていないが、積水ハウスの地面師事件から着想を得たのだろうと思われる。膨大な取材を重ねたことを伺わせる細かな描写の数々は著者の真骨頂と感じる。登場人物の造形も素晴らしい。
book

詠坂雄二, ドゥルシネーアの休日

詠坂雄二には、作品ごとにガラリと変わる作風に驚かされる。今作は単純なミステリではなく、アクションやサスペンスの要素を見事に織り込んでいる。事件に大きな影響を与えていることを匂わせながら一向に姿を見せない主人公 (?) も新鮮。
book

詠坂雄二, 電氣人閒の虞

遠海事件以来久しぶりの詠坂雄二。ホラーかと思わせつつ、最後はきちんとミステリとして落としてくれた。それだけに終わらず、最後の一文の壮大な引きを入れるあたりはやはり只者ではない。 なお文庫版の解説は完全なネタバレなので、これから読む人は要注意。
book

芦沢央, 許されようとは思いません

表題作の "許されようとは思いません" が秀作。ホワイダニット型の安楽椅子探偵モノだが、因習が残る地方の舞台設定と勘のいい探偵役の彼女という組み合わせが見事。文体も読みやすい。