mystery

book

青柳碧人, むかしむかしあるところに、死体がありました。

昔話ネタということで一見イロモノのようだが、中身はかなり本格ミステリ。誰もが知っている昔話の設定を活かしたストーリーの妙だけではなく、ミステリとしての作りも密室あり、倒叙あり、クローズド・サークルありとバラエティ豊かで飽きさせない。
book

青柳碧人, 赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。

ちょっと色物のミステリ本。赤ずきん、シンデレラ、ヘンゼルとグレーテル、眠れる森の美女、マッチ売りの少女と誰もが知っているおとぎ話を題材としながらも、どの作品もきちんと一ひねりが入っている。特に登場人物の性格はどれも大胆な新解釈を入れている。かなり吹っ飛んだ性格の赤ずきんを名探偵役に据えたのも見事。
book

詠坂雄二, 人ノ町

詠坂雄二には毎回作風の変化に驚かされる。今回は時代も地域も不明な雰囲気ファンタジーかと思いきや、案外しっかりとミステリーもしている。
book

東野圭吾, 名探偵の掟

推理小説のお約束を笑いに変えたメタ小説。どれも既存の推理小説を揶揄した短編だが、"アンフェアの見本" は表題に反して叙述トリックの範疇に収まった良策だと感じる。
book

小森健太朗, 大相撲殺人事件

ひょんなことから相撲部屋に入門したアメリカの青年マークは、将来有望な力士としてデビュー。しかし、彼を待っていたのは角界に吹き荒れる殺戮の嵐だった! 立合いの瞬間、爆死する力士、頭のない前頭、密室状態の土俵で殺された行司…本格ミステリと相撲、その伝統と格式が奇跡的に融合した伝説の奇書。 という煽り文を見るとバカミステリのようで、実際に中身もバカミステリなのだが、トリックは (やや軽めながら) 案外まとも。
movie

CUBE

娯楽映画として間違いなく面白いのだが、さすがに謎をすべて投げっぱなしはいかがなものかと思う。監督の狙いはそのあたりの謎解きよりも極限状況下での人間を描くことだというのは解るのだけれど。
book

詠坂雄二, ドゥルシネーアの休日

詠坂雄二には、作品ごとにガラリと変わる作風に驚かされる。今作は単純なミステリではなく、アクションやサスペンスの要素を見事に織り込んでいる。事件に大きな影響を与えていることを匂わせながら一向に姿を見せない主人公 (?) も新鮮。
book

詠坂雄二, 電氣人閒の虞

遠海事件以来久しぶりの詠坂雄二。ホラーかと思わせつつ、最後はきちんとミステリとして落としてくれた。それだけに終わらず、最後の一文の壮大な引きを入れるあたりはやはり只者ではない。 なお文庫版の解説は完全なネタバレなので、これから読む人は要注意。
book

芦沢央, 許されようとは思いません

表題作の "許されようとは思いません" が秀作。ホワイダニット型の安楽椅子探偵モノだが、因習が残る地方の舞台設定と勘のいい探偵役の彼女という組み合わせが見事。文体も読みやすい。
book

清涼院流水, コズミック

バーナード嬢曰く。での取り上げ方が気になって読んでみた。 壁本として酷評される理由は、その分厚さにあると感じる。最初からまともな密室トリックとして解決する気が感じられない事件を延々と19本も読まされるのはなかなか厳しい。