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齋藤孝, 上機嫌の作法

私には、不機嫌さは「なんらかの能力が欠如しているのを覆い隠すため」だとしか考えられません。

という冒頭の考察は実に至言。

また、世に蔓延る上機嫌はバカで不機嫌は知的という思い込みも何の根拠もないもので、知性のある上機嫌を目指そうという本書のメッセージには共感できる。

肝心の上機嫌になる方法は散発的なtipsがずらずらと続くだけであまり体系立てられたものではないが、とりあえず思いつくものから試してみるくらいでまずは良いのではないかと思う。

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Mimestream

しばらくChrome Application ShortcutでGmail生活をしていたが、Mimestreamに乗り換えることとした。

もともとGmailクライアント選定の条件としていた点の大半は満たしている。独立したアプリケーションなので当然ブラウザとは別のウィンドウで開けるし、ショートカットでいつでも手元に呼び出せる。メール編集中に常に宛先を表示しておける。Gmail互換のショートカットが使える (ただし、P/nのスレッド内移動など、いくつか使えないショートカットもある) ので、移行もスムーズ。ネイティブアプリなので動作も軽快。

残念ながら、自動でbccを付加する機能はないし、Plain Textのメールも作れない。当然ルーラーもない。これらの細かな欠点さえ許容できるのならば間違いなくおすすめできる。

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ビル・パーキンス(著), 児島修(訳), DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール

今までのマネー本はいかに資産を増やすかばかりで、その使い方についてはファイナンシャルプランナーに相談して必要な金額を見積りましょうとアドバイスするのがせいぜいだった。一方で本書はいかに資産を有効に活用して豊かな人生を送るかを述べている。そのメッセージは明快で、経験に投資をしろというもの。この方針はモノよりも経験に投資することが幸福度を高めてくれるという近年の幸福度の研究とも整合している。経験は記憶として残り、常に思い出を通して人生の出来事を再体験できる。

自身の体験以外に家族の経験への投資も有力な選択肢となる。漫然と過ごしていると自身の死後に家族に遺産を相続することとなるが、本書は生前に贈与することを勧めている。というのも、お金の価値を最大化できるのは子供が26-35歳のときだからだ。もちろん分別がない若すぎる時期に相続するのは得策ではないが、子供が60歳近くになってから遺産を相続しても、十分な経験に変えることはできない。そのバランスが取れるのが26-35歳の頃になる。

では、自身が何歳頃から (贈与分を除いた) 資産を取り崩し始めるべきかというと、45-60歳が最適となる。それを過ぎてしまうと、もはや金から楽しみを引き出す能力が失われてしまう。時間と金があっても健康があるとは限らない。また実際のところ、先延ばしできない経験も多い。子どもたちとの経験を楽しむことなどはその端的な例だろう。

この考え方を発展させたのが本書の提案するタイムバケットだ。これは名前から分かる通り、棺桶リストの影響を強く受けているが、5年または10年区切りのタイムバケットにやりたいことを入れていくのが最大の違いだ。実際に桶リストをタイムバケットに当てはめてみると、特定の時期でないと実現できないものがあるのがよく分かる。

もちろん、早期の取り崩しを実践するには死亡年齢や必要資産の緻密な見積もりが必要となるが、その点はやや楽観的な立場を取っている。リタイア直後のゴーゴーイヤーを過ぎれば行動は穏やかになるものであり、当然支出は抑えられる。また、資産運用によりインフレ率+3%程度の運用益を得られるものと見込んでいる。この前提での試算により、残りの人生での生活費の70%程度を必要額と算出している。それでも不安な向きには、長寿年金の活用も進めている。

総じて実に刺激的な本であり、今まで意識的にお金を使うことを考えてこなかった人は人生観すら揺さぶられることになるだろう。

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服部昇大, 邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん (8)

前巻の池ちゃんのビッグウェーブが去り、今巻は平常運転。巻末には時事ネタのインボイス制度解説ギャグ漫画も収録。

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早池峰キゼン, テンバイヤー金木くん (1) (2) (3)

COMIC MeDuの連載を単行本化したもの。転売という賛否両論のテーマながら、金木くん、大友くんをはじめとする主要キャラクタがどれも憎めない仕上がり。

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Kensington SlimBlade Trackball

Expert Mouse Optical Trackballとの一番の違いはスクロール。専用のホイールではなく、大玉を水平方向に回すことでスクロールする。内蔵スピーカから流れるカチカチ音も心地良い (が、これは好みが分かれるかもしれない)。慣れると、球全体をつまむことなく球の右側 (右利きの場合) の腹をこするだけでスクロールできるようになる。

今どきのポインティングデバイスほど大量のボタンが付いているわけではなく、シンプルな作り。大量のマクロを登録してという使い方には向かないが、基本がしっかりしたデバイスを好む向きには最適。

インタフェースは普通のUSB Type-A。ケーブルがナイロン編みなのが特徴的。Windowsはもちろん、macOSでの動作も快適。変な癖もなく、Karabiner-Elementsからも自由に制御できる。

リストレストが付属していない点は残念。トラックボールとしては背が低めだが、それでも長時間利用の際はリストレストが欲しくなる。

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坂井豊貴, 多数決を疑う 社会的選択理論とは何か

誰もが疑いなく使っている多数決だが、よくよく検討してみると存外に性質の良くない集約ルールだと分かる。棄権防止性、中立性は備えるものの、ペア敗者基準、ペア勝者 (弱) 基準といった基本的な性質を満たさないという致命的な問題がある。この問題を解決もしくは緩和する集約ルールとしてボルダルールやコンドルセ・ヤングの最尤法などがあるが、直感的な理解のしやすさなどを考えるとボルダルールが現実解だろうか。

これだけ問題のある多数決が広く採用されているのは、もちろんそのわかりやすさに依るところが大きいのだろうが、著者はただの慣習に過ぎず文化的奇習とすらみなしているようだ。

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無印良品 肩の負担を軽くするリュックサック 黒

休日用のサブバッグとして購入。カラーバリエーションがあるが、やはり定番の黒で。

生地の薄さは頼りなさを覚えるほどだが印象よりは丈夫そう。売りの肩紐も背負いやすく圧迫感がない。一見小ぶりだが驚くほどものが入り、スーパーの大レジ袋をまるまる入れてもまだ余裕がある。この価格帯のリュックサックとしては十分すぎる。

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宮竹 貴久, 「先送り」は生物学的に正しい 究極の生き残る技術

生物学の雑学本としてみれば著者の広い知見を楽しめる良書だが、それだけに無理にビジネスの話にこじつける必要はなかったように思う。出版社からの要請だろうか。

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前田亜紀, カレーライスを一から作る 関野吉晴ゼミ

表題通り、カレーライスを自分たちの手で一から作ろうという試み。武蔵野美術大学の関野吉晴ゼミでの1年間の取り組みをまとめたもの。

企画としては単純に面白いのだが、大学で実施する目的もルール設定の意図も最後まではっきりしない。一応のルール設定として、1年間の学期の範囲内で、自然の中から採取するか一から育てるかして、カレーライスの材料をすべて揃える、という方針が示され、このあたりまではまだ納得感がある。しかしながら、育てる場合はなるべく “自然” に近い形で化学肥料や農薬は使わないという追加ルール (さらに後半には、自家採種できる種を選択していたり、遺伝子組み換えのトウモロコシが含まれる可能性がある配合飼料も避けている記述もある) がなんの説明もなしに出てくるあたりから、”自然” というものの定義が気になってくる。人工物そのものの田圃で田おし車を使って除草することは問題視していないようなので、基準が今ひとつわからない。著者自身も少しは疑問があったのだろうか、

関野さんも、どうしてそんなルールを提案したのか、くわしい説明はしない。活動を通して自分たちで考えてもらいたいということなのだろうか。

と述べているあたりに良心を感じる。

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