science

book

ベン・リンドバーグ(著), トラビス・ソーチック(著), 岩崎晋也(訳), アメリカン・ベースボール革命 データ・テクノロジーが野球の常識を変える

マネー・ボールに代表される従来のセイバーメトリクスは、野球選手たちの能力や勝利への貢献度を正しく評価し、埋もれた才能を低コストで発掘することが大きな目的であった。一方、本書アメリカン・ベースボール革命は、いかにして優れた選手を育成するかに主眼を置いている。いわば、セイバーメトリクスの一歩先を行くものと言って良いだろう。 取り上げられる手法も、最近メディアでも取り上げられることが多くなったバレルから変化球の比率まで多岐に渡る。どれも効率よく選手を育成するには欠かせない手法である...
book

小澤一雅, 卑弥呼は前方後円墳に葬られたか 邪馬台国の数理

細々と続いているマイブームの邪馬台国もの。やはり専門外の方の作品が面白い 本書も考古学ではなく情報工学を専門とする大阪電気通信大学教授の手によるもの。専門を生かし、歴代天皇の在位年数を数理的に分析し、正しい崩年を推定しようというアプローチは面白い。
comic

高世えり子, なるほど! カンタン! 理系ごはん

理系的な合理的な調理法かと思って手に取ったら、どちらかというと化学知識を活かした料理本だった。料理は科学実験とはよく言ったもので、相性が良い組み合わせだと思う。漫画もエッセイコミックの王道スタイルで読みやすい。
book

斉藤淳, ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語 わが子の語学力のために親ができること全て!

著者の主催するJ Prep斉藤塾への誘導があるので多少のバイアスは仕方ないが、それを割り引いて読めば役に立つ情報も多い。多様な教材へのポインタが示されるので、それを目当てに読むのも良い。 英語の音に重きを置いている姿勢は評価できる。フォニックス読みの練習の推奨や、音をベースとして指導している英語塾を選ぶことなどは納得感がある。また、CEFRによる語学力測定やレクサイル指数による本選びなど、この分野では当たり前でもあまり知られていない事柄を一通りさらえるのも良い。
book

広瀬友紀, ちいさい言語学者の冒険 子どもに学ぶことばの秘密

言語学者が子供の言語獲得の過程を観察したエッセイ集。 子供が日本語の無声音 (濁音) と有声音 (濁音) の対応のずれに気付く様子が実に興味深い。「「は」にテンテンつけたら何ていう?」という大人にとっては簡単な質問に答えられない子供が多いという現象がある。これは種を明かすと、「か-が」、「さ-ざ」、「た-だ」が正しく無声音-有声音の関係にあるのに対し、「は-ば」が全く対応していない音であるため。テンテンの正体を正しく知っている子供こそ答えられないちょっと意地悪な質問である。こ...
book

山北篤, 現代知識チートマニュアル

ラノベ作家でなくとも、広く浅くの雑学本として楽しめる。大ベテランの著者だけあり、トンデモな記述はほとんどない。 通読してみると、実は現代人の受けている教育というものがすでにチート級であるということに気づく。特に工学や農学、医学などは、基本的な知識ひとつで大きな利益が生み出せる可能性があることがよく分かる。
book

高橋洋一, 統計・確率思考で世の中のカラクリが分かる

全体の半分ほどの分量を占める第1章は表題通りの統計・確率の話。こちらはベイズ確率、標本、シミュレーションの基本、第一種過誤と第二種過誤など、よく誤って使われている言葉を広くカバーしている。 後半は統計・確率とはほぼ関係のない東電問題や自身の政策の話で、やや寄せ集め感がある。
book

ネイサン・レンツ(著), 久保美代子(訳), 人体、なんでそうなった? 余分な骨、使えない遺伝子、あえて危険を冒す脳

人体の設計の素晴らしさを綴った本は多数あるが、その人体のイマイチなところに焦点を絞ったのが本書のミソ。原著のHuman Errorsという表題もニクい。 非効率な光受容細胞の向きや盲点、遠回りする反回神経、椎間板ヘルニアを引き起こす脊柱の構造などの有名な問題はもちろんのこと、頻繁な風邪の原因である副鼻腔、ビタミンCやカルシウムが不足しがちな理由といった比較的知られていない問題も広く取り上げられている。後半では最近の脳科学の成果により明らかになった人間の錯覚や錯誤も取り上げられ...
book

坂井豊貴, 多数決を疑う 社会的選択理論とは何か

誰もが疑いなく使っている多数決だが、よくよく検討してみると存外に性質の良くない集約ルールだと分かる。棄権防止性、中立性は備えるものの、ペア敗者基準、ペア勝者 (弱) 基準といった基本的な性質を満たさないという致命的な問題がある。この問題を解決もしくは緩和する集約ルールとしてボルダルールやコンドルセ・ヤングの最尤法などがあるが、直感的な理解のしやすさなどを考えるとボルダルールが現実解だろうか。 これだけ問題のある多数決が広く採用されているのは、もちろんそのわかりやすさに依るとこ...
book

宮竹 貴久, 「先送り」は生物学的に正しい 究極の生き残る技術

生物学の雑学本としてみれば著者の広い知見を楽しめる良書だが、それだけに無理にビジネスの話にこじつける必要はなかったように思う。出版社からの要請だろうか。