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生田武志, ルポ 最底辺 不安定就労と野宿

著者は野宿者支援活動を進めている方で、特に日雇い労働問題に詳しく、自身も学生時代から釜ヶ崎での日雇い生活を体験している。そのためか、様々な不安定就労の中でも特にドヤ街での日雇い労働生活とそこからの野宿への転落に深く切り込んだ内容となっている。野宿生活に陥るまでの流れやそれに対する行政の不備は非常によく分かるが、労働者やその支援者の視点からしか語られていないのがやや残念。行政側の論理も取り上げられれば、より深い考察ができたものと思う。
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南信長, マンガの食卓

古今東西のマンガ作品を "食" のテーマで括ってまとめたもの。もちろん、単行本一冊ですべての食マンガを網羅することはできないのだが、主要な食マンガの流れはきちんと押さえられている。巻末には作品索引がつけられているのも嬉しい。
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本川裕, 統計データはおもしろい! 相関図でわかる経済・文化・世相・社会情勢のウラ側

統計データというよりも、相関図のおもしろさに注目した本。著者は、社会実情データ図録も運営している。退屈な統計な解説はさておき、社会ネタの相関図のおもしろさが前面に出てくるので読んでいて飽きない。また、データを深掘りする際の思考の流れがよくわかる構成になっているのもありがたい。
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郷田マモラ, モリのアサガオ 番外編

モリのアサガオの続編。本編と同様、法学よりも感情論に偏りがちではあるが、死刑反対派の素直な感情はこのあたりかもしれないと思う。
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豊田正義, 消された一家 北九州・連続監禁殺人事件

あの北九州監禁殺人事件を追ったルポタージュ作品。事件の内容が内容だけに関係者へのインタビューは限られているが、公判記録から事件を見事に再構成している。主犯の松永太の生育環境など掘り下げが不十分と思われる個所があるものの、関係者が口を閉ざす中でよくここまでまとめたものと思う。この事件を扱う上では避けて通れない監禁や殺人の描写はかなり生々しいので、耐性がない方はご注意を。
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井上純一, 中国嫁日記 (三)

ついに中国での生活が始まり、現地のネタが増えてくる。結婚生活が安定期に入ったこともあり、大きなイベントと言うよりは身近なネタが中心。ブログからの再録が多いが、書き下ろしの国際結婚の事務手続きなどはなかなか興味深い。
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礫川全次, 隠語の民俗学 差別とアイデンティティ

在野の研究者による隠語の世界への導き。先人の研究からきちんと解説しているので、初学者でも楽しめる構成となっている。隠語の性質上、記録が少なく想像に頼らざるをえない部分が多いとはいえ、語源の推定などでやや論理が飛躍している箇所が見られる。
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久住昌之(原作), 土山しげる(画), 漫画版 野武士のグルメ

野武士のグルメをマンガ化したもの。面白いことは面白いのだけれど、原作に忠実な構成であまり土山しげるらしさが感じられないのがやや残念か。
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手束仁, 高校野球マネー事情

高校野球のマネーと言ってもいわゆるドラフトの裏金ではなく、野球部運営にかかる費用や保護者の支援の方。取材対象が関東近郊に偏っているものの、リアルな数字は説得力がある。また、一線で活躍している監督のインタビューや対談も収録されており、本音に近い愚痴が垣間見える場面も。
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武田知弘, ナチスの発明

表題通りのナチスの発明はごく一部で、大半はナチス時代のドイツに少しでも関係ある発明や製品、研究をこじつけたもの。それでも分量が足りなかったのか、後半はナチスの成り立ちや人物紹介で水増しされている。巻末に参考文献一覧はあるものの、すべて和書で二次資料が中心の上に各項目がどこから引用したものかがまったく示されていないので、話半分で読むのが良いだろう。コンラート・ツーゼが計算機における二進法利用を最初に発案したとするなど、明らかな誤りも見られる。