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日経デザイン(編), パッケージデザインの教科書

表題通りパッケージデザインに特化した内容で、かなり工業デザイン寄り。飲料容器などの重点分野は製造工程の基礎から学べるように工夫されている。色の印象など主観的な部分は統計調査による裏付けを加えているのも良い。
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上村雅之, 細井浩一, 中村彰憲, ファミコンとその時代

本書は二部構成で、ビデオゲームの誕生からファミコンの開発までを上村雅之が綴った第一部と、ファミコンが産業や社会に与えた影響を考察した第二部から成っている。巻末には、上村雅之と細井浩一の対談も収録されている。やはり眼目は上村の第一部。ファミコンの開発や設計思想といった上村でなければ語れない内容は濃く、今後ビデオゲーム史を研究する人々にとって第一級史料となりうるだろう。ファミコンに至るまでのビデオゲームの歴史が上村の視点から示されているのも興味深い。
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帚木蓬生, やめられない ギャンブル地獄からの生還

ギャンブル依存症の治療を専門とする医師による著作。読み始めて早々、冒頭のギャンブル依存症の患者による手記6本に大きな衝撃を受ける。彼らの心理は決して共感できるものではないが、表題にもある "やめられない" 状態に陥るプロセスが痛いほどよく分かる。その後に続くギャンブル依存症の基礎知識や自助グループ (ギャンブラーズ・アノニマス) の解説も平易でありながら、病的ギャンブリングの恐ろしさがひしひしと伝わってくる。おすすめ。
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内澤旬子, 世界屠畜紀行

世界中の肉食文化地域の屠畜の様子を扱うドキュメンタリ。屠畜の現場の様子や地域差はもちろんのこと、賤業とされがちな屠畜業者の各社会における位置付けを重視した取材が印象的。紀行文に添えられた味のあるイラストも良い。
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西澤保彦, 人格転移の殺人

SF要素含みのミステリ。突飛な設定ではあるが、ミステリとしてはフェアな範囲。テンポが良く進むのは良いのだが、中盤がさすがに駆け足過ぎるか。
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能田達規, マネーフットボール (1) (2) (3) (4) (5)

既刊の5巻までまとめ読み。種本はサッカー データ革命。数字重視のフットボールをうまくマンガに落とし込んでいる。それだけにとどまらず、あまりマンガの題材として使われないJ2やレンタル移籍といった要素を巧みに織り込んでいる点も見事。
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岩瀬昇, 石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門

三井物産で原油取引や石油開発に携わっていた著者による、石油や天然ガス業界の解説。科学や軍事の視点は控え目で、ややビジネス寄り。油田開発や原油取引のビジネスの現場を基礎の基礎からしっかり解説してくれる。
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かのよしのり, 銃の科学 知られざるファイア・アームズの秘密

著者は陸上自衛隊の武器補給処技術課研究班の出身。銃火器の構造からその歴史、最近のトレンドまでをうまく一冊にまとめている。見開き2ページで一項目が完結する形式と大量の図版で非常に読みやすい。事前知識もほぼ必要としない構成なので、初心者の一冊目としても有用。強いて欠点をあげると、索引が貧弱なのだけがやや残念。
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東野圭吾, 仮面山荘殺人事件

十字屋敷のピエロに続いてもう一冊、東野圭吾の初期作品を。冒頭からのそこはかとない違和感を小説だからとして無意識にスルーしていたが、その隙を見事に突かれた。帯の "本格ミステリーの傑作" のコピーには少々納得しかねるが、傑作であることには間違いない。
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池田信夫, 希望を捨てる勇気 停滞と成長の経済学

池田信夫の書き下ろし。当時のブログの内容をより深掘りしたような作品。日本経済の長期停滞の原因である正社員の既得権益がもたらす格差と財政政策の失敗に関する分析が中心で、トンデモ度は低め。全体的にネガティブ基調が過ぎる様に感じるが、出版時点の2009年の空気に引きずられている部分もあるのかもしれない。