book 高沢皓司, 宿命 「よど号」亡命者たちの秘密工作 よど号ハイジャック事件の実行犯グループを中心に、関連する対日工作を追ったノンフィクション。主体思想北朝鮮側の思惑を踏まえた推理の数々は、やや独善的な部分が残るものの、なるほどと思わせるものが多い。 2013-09-08 book
book 小牟田哲彦, 鉄道と国家 「我田引鉄」の近現代史 政治の視点から見た鉄道史。鉄道絡みの歴史上のエピソードには興味深いものが多く、単純に読み物として面白い。歴史を辿り、限られた証拠から関係者の思惑を読み解き、と文句なし。ただし最終章の "海外への日本鉄道進出" は唐突に外交に関する私見が始まり、やや蛇足感がある。 2013-09-02 book
book 南直人, ヨーロッパの舌はどう変わったか 十九世紀食卓革命 19世紀に起きた社会構造の変化がヨーロッパの食生活に与えた影響を解説する。新世界から得られた新たな食材 (ジャガイモ、トウモロコシ、コーヒー、紅茶) や新たな食品加工方法の発明 (缶詰やマーガリン) はもちろんのこと、都市化に伴う人口変動や流通の発達、テーブルマナーの洗練といった社会的な要因がヨーロッパの食生活に様々な影響を与えてきたことがよく分かる。 2013-08-22 book
book 芝崎みゆき, 古代エジプトうんちく図鑑 古代マヤ・アステカ不可思議大全の前作にあたる本。相変わらず尋常ではない書き込みで、読み応えは十分。古代エジプトの歴史はもちろん、エジプト旅行記が良い味を出している。 2013-08-16 book
book ヴィトルト・リプチンスキ(著), 春日井晶子(訳), ねじとねじ回し この千年で最高の発明をめぐる物語 "この1,000年で発明された最高の道具" をテーマに調査を進めるうちに、次々とねじの歴史の深みに嵌っていく様子は上質の推理小説の趣。強いて欠点を挙げると、工具の歴史に詳しくない人間には少々図版が不足しているように思える。門外漢には文字だけでは想像がつかない部分がある。 2013-08-13 book
book 小林章, 欧文書体 その背景と使い方 欧文書体の解説書は数あれど、書体の成り立ちの根幹である平筆によるカリグラフィから本気で解説してくれるものは珍しい。書体デザインはもちろんのこと、欧文組版の不思議なルールの数々もその根幹を辿ると極めて合理的に発展してきたことがよく分かる。おすすめ。 2013-08-03 book
book 斎藤駿, なぜ通販で買うのですか ルームランナーや通販生活を世に送り出してきた著者による通販論。当事者目線でカタログ通販の発展の歴史を追った本は貴重。ややロジックの後付け感があったり、小売の視点に偏りすぎているきらいはあるが、当事者の語りというのはそんな欠点を補って余りある迫力がある。文体の妙な軽さと過去の失敗を反省しているようでしていない様子は好き嫌いが分かれるところだろうか。 2013-07-12 book
book 深田洋介(編), ファミコンの思い出 思い出のファミコンの投稿内容を書籍化したもの。ゲームの内容というよりも周辺エピソードが中心。当時は子供も大人もゲームとの付き合い方が良くわからなかったことがうかがえる。ファミコン最初期の直撃を食らった世代ならば共感できる内容が多いはず。 2013-07-08 book
book 野口悠紀雄, 経済危機のルーツ モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか 1970年代以降の世界経済史。まさにその時代を生きてきた著者の生の感覚や体験談が興味深い。歴史の延長として見た未来に向け日本がなすべきこととして、衰退産業への支援の中止、資本や人的資源のグローバリゼーション、専門教育への投資が挙げられている。いずれも目新しい提言ではないが、歴史を振り返ればそれらがまさに正論であることがよく分かる。 2013-06-30 book
book 岩堀修明, 図解・感覚器の進化 原始動物からヒトへ水中から陸上へ 久しぶりのブルーバックスは感覚器に着目した進化論。生物が海中から陸上へと移動する際に感覚器がどのように適応していったか、また地上から海中へと戻っていったクジラがどのように再適応を果たしたのかを豊富な図版で解説してくれる。こうして歴史を見てみると、行き当たりばったりを繰り返す進化にも関わらず、見事な適応を果たしているのには神秘を感じずにはいられない。 2013-06-27 book