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ブライアン・カプラン(著), 奥井克美(監訳), 長峯純一(監訳), 選挙の経済学

選挙そのものを経済学で読み解こうというよりは、投票者の持っているバイアスの話題が主。原題の "The Myth of the Rational Voter" の方が内容を的確に表している。政治に関する知識の有無がバイアスを生むという主張は実に説得力がある。米国の経済意識調査 (SAEE)を中心としたエビデンスも十分。後半の合理的無知や原理主義者間の対立に関する議論はやや観念的であり、科学的な調査結果を求める向きにはやや退屈かもしれない。
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Dr. フィリップ・マフェトン(著), 中塚祐文(監修・訳), 『マフェトン理論』で強くなる! 革命的エアロビックトレーニング

心拍数を強く意識したエアロビックトレーニング (非アネロビックトレーニング) の解説書。一般の市民ランナーにも取り込める内容が多い。心拍数による負荷の調整、給水の重要性、食生活の改善を主に扱っているが、エビデンスは少なめ。マーク・アレンや藤原裕司といった少数のアスリートの成功例に大きく頼っている印象。食生活の点では低炭水化物も (もちろん個人の適正を見ながらという前提ながら) 薦められているが、最近の研究を見ると中長期のリスクを考慮して取り入れるべきと思う。
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ブライアン・スウィーテク(著), 野中香方子(訳), 移行化石の発見

進化論への反論としてよく見られる移行化石の不足にフォーカスした作品。現代に至るまでの化石探求事情がよく分かる。移行化石以外の考古学一般の読み物としても非常に質が高い。
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水島弘史, 美味しさの常識を疑え! 強火をやめると、誰でも料理がうまくなる!

今日からおいしくなる洋食のシンプルルールの改訂版と言ったところ。火加減、塩加減、切り方という基本中の基本のところに絞った解説が実に分かりやすい。従来の料理の常識と反する部分が多々あるが、一つ一つ理詰めで説得力がある。
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ASIOS, 謎解き超科学

いわゆる疑似科学の解説本。あまり目新しいネタはなく、この分野に興味のある人ならば既知のものが多いだろう。それでも、何となく胡散臭いとして切り捨てるのではなく、きちんと科学的な裏付けをもって判断しようという姿勢は好感が持てる。
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エリック・シーゲル(著), 矢羽野薫(訳), ヤバい予測学 「何を買うか」から「いつ死ぬか」まであなたの行動はすべて読まれている

ビッグデータを用いた予測の解説書。技術的な詳細よりも事例紹介が中心。豊富な実例は眺めているだけでも楽しいが、参考文献が不明なネタが多いのがやや難。
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トーマス・クーン(著), 中山茂(訳), 科学革命の構造

実はまだ読んでいなかった古典。パラダイムとはもはや便利に使われる語となってしまっているが、元々は精緻に組み上げられた概念であるのがよく分かる。翻訳が今ひとつこなれていないのが残念。
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中田亨, ヒューマンエラーを防ぐ知恵 ミスはなくなるか

ヒューマンエラーの科学的な定義よりも、実践的な防止活動を中心とした内容。実例が豊富で、即座に活用できそうなものも多い。
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ネマタ(著), 福地誠 (編), 勝つための現代麻雀技術論

ネット麻雀界隈で確立されつつある戦術論の現時点での一応のまとめの様な本。読み物としてはあまり面白い本ではないが、戦術書としてはおそらく現時点で最もまともな部類のため、強くなりたい人には良書だろう。ただし、数値的な裏付けがある部分と感覚的な部分が混在しており、かつそれらが文章上であまり書き分けられていない点には注意が必要。
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Wes McKinney(著), 小林儀匡(訳), 鈴木宏尚(訳), 瀬戸山雅人(訳), 滝口開資(訳), 野上大介(訳), Pythonによるデータ分析入門 NumPy、pandasを使ったデータ処理

普段の生活はRubyが多いのだが、科学技術計算が大目の仕事をすることとなったのでPython + pandasの勉強。想定読者はある程度Pythonが書ける人で、Python自体が初めてという人には向かない。pandasやその基礎となっているNumPy、さらには可視化に必要なmatplotlibまで幅広く学べる。実例も豊富でさすがのオライリークオリティ。