sociology

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トマス・J・スタンリー(著), ウィリアム・D・ダンコ(著), 斎藤聖美(訳), 新版 となりの億万長者 成功を生む7つの法則

本書の "億万長者" とは、キャッシュフローが豊富な人ではなく、ストックが豊富な人のこと。億万長者の多くが倹約によりその資産を築いてきたことを統計データから明らかにする。データがやや古いのとサンプリングの適切さにはやや疑問が残るのとがやや残念だが、結論はさもありなんと思わせる。
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田口久美子, 書店風雲録

一世を風靡したセゾングループのリブロの内情を関係者視点で。著者は当時リブロを含めた様々な書店を渡り歩いていた書店員。リブロに特に思い入れがない人でも、当時の書店事情に興味があれば楽しく読めるだろう。やたらと括弧が入るせいで流れが悪い文章がやや難か。
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セス・ゴーディン(著), 大橋禅太郎(訳), バイラルマーケティング

2000年前後に流行した口コミマーケティングの解説本。当時一世を風靡したHotmailを中心に、やや懐かしい名前も並ぶ。今となってはネットワークビジネスやステルスマーケティングと見なされかねない内容も含まれるあたり、当時のおおらかさが感じられる。
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鈴木みそ, マスゴミ

Kindle限定のマンガ。タイトルからは社会派マンガを想像していたが、思ったよりもフィクション色が強い娯楽作品だった。エンターテイメントと割り切ってみれば上々。後半には表題作以外の短編も収録。婚活クエストあたりは往年のあんたっちゃぶるを思わせるノリで嬉しくなる。
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小野一光, 家族喰い 尼崎連続変死事件の真相

尼崎事件のルポタージュ。出遅れ組ながら、地道に周辺人物や地元民との関係を築く取材により独自の視点を得ている。ある程度事件のあらましを理解している読者を対象としており、当時のニュースをあまり追っていなかった場合は事前に概要を予習しておく必要があるだろう。事件当時に話題になった通り、関係者の相関図の複雑さに滅入ってくる。本書も丁寧な説明を試みているのだが、それでも一読して理解するのは厳しい。
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フェイス・ダルージオ(著), みつぢまちこ(訳), 地球の食卓 世界24か国の家族のごはん. ピーター・メンツェル(著)

世界各国の家族を訪ね、1週間分の食料を見せてもらう試み。経済的にも気候的にも文化的にも幅広く選択されている。大判を活かした美麗な写真の数々はまさに眼福。個人的な好みもあるが、中国やグリーンランドなど、伝統的な食生活に近代化の波が押し寄せている様子が堪らない。レイアウトが今ひとつなのが残念。文章の流し込みがまずく、一連の文章が生き別れになっている箇所が散見される。
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ブライアン・カプラン(著), 奥井克美(監訳), 長峯純一(監訳), 選挙の経済学

選挙そのものを経済学で読み解こうというよりは、投票者の持っているバイアスの話題が主。原題の "The Myth of the Rational Voter" の方が内容を的確に表している。政治に関する知識の有無がバイアスを生むという主張は実に説得力がある。米国の経済意識調査 (SAEE)を中心としたエビデンスも十分。後半の合理的無知や原理主義者間の対立に関する議論はやや観念的であり、科学的な調査結果を求める向きにはやや退屈かもしれない。
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サラ・ウォリス(編著), スヴェトラーナ・パーマー(編著), 亀山郁夫(露語訳), 河野万里子(仏語訳), 関口時正(波語訳), 赤根洋子(独語訳), 田口俊樹(英語訳), 私たちが子どもだったころ、世界は戦争だった

第二次世界大戦期の各国の若者が綴った日記をまとめたもの。ナチスの侵略の直接的な被害者だけではなく、英国王立空軍に志願した若者、遠く離れた米国でニュースとして第二次世界大戦を知るユダヤ少年など、レニングラードで食糧難に苦しむ一家など、様々な立場の子ども達の日記を通じて、第二次世界大戦を立体的に描いていく。欧州の子ども達が中心だが、日本人も二人含まれている。こちらも、一高のエリート青年と、福島県で家業を手伝う少女と、世の中の見方がまったく異なる二人を取り上げており、戦争の見方が決...
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阿部共実, ちーちゃんはちょっと足りない

読むのが辛いタイプの作品。今まで本当に順風満帆な人生を送り続けていた人以外は、何かしら心を揺さぶられる部分があると感じる。
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清水潔, 桶川ストーカー殺人事件 遺言

フォーカス誌上で桶川ストーカー殺人事件の犯人グループを特定して名を挙げた清水潔によるルポタージュ。事件そのもの以上に、警察批判に力を入れている印象。事細かに書かれた週刊誌記者の取材行動も興味深い。