sociology

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石井彰, エネルギー論争の盲点 天然ガスと分散化が日本を救う

出版時期からすると3.11直後に慌てて出版されたようにも見えるが、内容は意外と本格派。電力のみではなくもう少し広い視点でエネルギー全体の最適化を考えている点が特徴的。著者の経歴からしてやや天然ガスに肩入れし過ぎているきらいはあるが、概ね説得力のある内容。
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安明哲(著), 池田菊敏(訳), 北朝鮮 絶望収容所

脱北者による告発本。いわゆる政治犯ではなく、警備隊員として完全統制区域に務めていた人物の手記であり、より広い情報が含まれている。著者は現在は文筆業ではなく農協勤務とのことなので、無理に刺激的にするインセンティブは少ないものと思われる。とはいえ、他の証言と付き合わせる必要は感じる。
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小牟田哲彦, 鉄道と国家 「我田引鉄」の近現代史

政治の視点から見た鉄道史。鉄道絡みの歴史上のエピソードには興味深いものが多く、単純に読み物として面白い。歴史を辿り、限られた証拠から関係者の思惑を読み解き、と文句なし。ただし最終章の "海外への日本鉄道進出" は唐突に外交に関する私見が始まり、やや蛇足感がある。
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三橋貴明, マスゴミ崩壊 さらばレガシーメディア

既存マスコミに対する批判本。従来からネット上で頻繁に語られているマスコミ批判やマスコミの凋落の原因をまとめた体裁であまり新味はないが、今まであまりマスコミに関して興味を持たなかった人が一冊目に読むには良い内容。
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三品和広, どうする? 日本企業

日本企業の衰退の原因を6つの視点から探る。売上高の成長を追い求めたために生じた利益率の低下、コンフォーマンス・クオリティを追い求めたために生じたパフォーマンス・クオリティの低下など、ある面での成功が他の成功を奪ってしまう事例は実に刺激的。
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西内啓, 統計学が最強の学問である

ビッグデータ時代に乗った統計学賛美本。前半の統計学を俯瞰した部分は読み物として上出来。このあたりは専門外の人にも楽しめる内容。後半は少々専門的な話になるので素養がある人向けか。一度統計学を学んだ人が、統計学の全体像を整理し直すには良い内容。
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渡邉正裕, これが本当のマスコミだ 社員が教える企業ミシュラン

マスコミ各社の企業情報を、従業員の立場で評価したもの。週刊誌的に読むのなら面白いが、真偽が不明な情報や憶測と思われる内容も多いので話半分で。2005年の出版のため、現在では少し古くなっている点も注意。
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太田さとし, 内部告発マニュアル

非常に実践的な内部告発指南本。無闇に内部告発を煽るのではなく、きちんとリスクを考慮した上での最終手段として位置付けているのは良心的か。内部告発以外の職場環境改善の手段も各種論じられているので、内部告発など考えてもいないが少しでも改善できれば、という向きにもおすすめできる。
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清永賢二, 清永奈穂, 犯罪者はどこに目をつけているか

元警視庁犯罪予防研究室長の肩書きを持つ著者による犯罪予防論。何と言っても見どころは経験豊富な犯罪者による解説。彼らがどのような視点でターゲットを選定し、計画を立てるのか、また何を嫌うのかは非常に興味深い。
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ジョージ・ソーンダーズ(著), 岸本佐知子(訳), 短くて恐ろしいフィルの時代

奇妙な童話風の物語として始まるが、その裏はどろどろしたものが詰まっている。普通の人間がちょっとしたきっかけで簡単に独裁者となってしまう様子が見事に描かれている。内容も良いが、翻訳も装丁も水準以上。