sociology

book

神永正博, 学力低下は錯覚である

世間で良く語られる "ゆとり教育による学力低下" 論がきちんとしたマクロデータで検証されている。学力低下の主原因はゆとり教育ではなく少子化、理工系離れは女子の進学率向上が原因で男子の理工系学生は減っていない、といったあたりは言われないとなかなか気付かないもの。良くある論説に騙されないためのリテラシー本としてもおすすめ。
book

アレックス・バーザ(著), 小林浩子(訳), ウソの歴史博物館

古今東西の世間を騒がせてきたウソを集めたもの。いわゆる hoax の類が中心で、読んでいて爽快なのが嬉しい。
book

河岸宏和, “食の安全” はどこまで信用できるのか 現場から見た品質管理の真実

著者は畜産を中心に、食肉処理場から食品工場、大手スーパーまでを経験された方。食品流通の暴露話はやっぱり面白い。流通側の視点から "コンビニエンスストアの食品ほど安全なものはない" という言葉が出てくるのは示唆に富む。コンビニ弁当は対面販売の食品と比較して、真空冷却後のチルド輸送などの温度管理やpH管理がきちんとなされていること、衛生管理体制が整っていること、大量生産をする必要があるため毎日原材料から作り上げていること、などは言われてみれば納得の内容。
book

川井龍介, これでも終の住処を買いますか

日本の住宅環境にケチをつける本。個別事例がほとんど脈絡なく挙げられているだけで、日本の住宅はこうあるべきという芯の通った主張が感じられないが、住宅の専門家ではない新聞出身のジャーナリストなので仕方がない。読み物としてはそこまで悪くない。
book

上原善広, 被差別の食卓

自身も「むら」出身である著者が、世界の被差別民のソウルフードを訪ねて旅する。この難しいテーマを扱いながらも読後感が悪くないのは著者の筆力のおかげか。
comic

郷田マモラ, サマヨイザクラ 裁判員制度の光と闇 (上) (下)

タイムリーな裁判員マンガ。欲張って色々と詰め込みすぎている感はあるが、裁判員制度の闇という主題がしっかりしているため、一気に読めてしまう。
book

草下シンヤ, 裏のハローワーク

怪しげな職業の取材をまとめた本。テーマがテーマだけにゴシップ的な内容だが、気軽に読むには申し分ない。
book

清水克行, 大飢饉、室町社会を襲う!

室町時代の応永の大飢饉をドキュメント形式で。飢饉の中で限られた物資が京都に集約される構造になっており、それを追って難民達も京都に流れ込んだという考察は興味深い。
book

海老原嗣生, 学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識

雇用の常識「本当に見えるウソ」に続いて、今度はキャリアにまつわる俗説を見事に斬ってくれた。今作は前著よりももう少しミクロに寄った内容で、個別事例や労働者視点でのキャリアプランにも触れられている。その中でも、「就社より就職」という最近一部でまことしやかに語られている俗説に流されることのない、日本の総合職の仕組みを上手く利用する就社の提案は、それなりにサラリーマン経験を積んだ今でこそ頷ける。就職活動中の学生などにもぜひ読んでもらいたい。
book

森川方達, 帝国ニッポン標語集 戦時国策スローガン・全記録

戦時中のスローガン4237句をまとめただけの本なのだが、下手な歴史書よりも、その時代のムードがよく伝わってくる。