sociology

book

川井龍介, これでも終の住処を買いますか

日本の住宅環境にケチをつける本。個別事例がほとんど脈絡なく挙げられているだけで、日本の住宅はこうあるべきという芯の通った主張が感じられないが、住宅の専門家ではない新聞出身のジャーナリストなので仕方がない。読み物としてはそこまで悪くない。
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上原善広, 被差別の食卓

自身も「むら」出身である著者が、世界の被差別民のソウルフードを訪ねて旅する。この難しいテーマを扱いながらも読後感が悪くないのは著者の筆力のおかげか。
comic

郷田マモラ, サマヨイザクラ 裁判員制度の光と闇 (上) (下)

タイムリーな裁判員マンガ。欲張って色々と詰め込みすぎている感はあるが、裁判員制度の闇という主題がしっかりしているため、一気に読めてしまう。
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草下シンヤ, 裏のハローワーク

怪しげな職業の取材をまとめた本。テーマがテーマだけにゴシップ的な内容だが、気軽に読むには申し分ない。
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清水克行, 大飢饉、室町社会を襲う!

室町時代の応永の大飢饉をドキュメント形式で。飢饉の中で限られた物資が京都に集約される構造になっており、それを追って難民達も京都に流れ込んだという考察は興味深い。
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海老原嗣生, 学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識

雇用の常識「本当に見えるウソ」に続いて、今度はキャリアにまつわる俗説を見事に斬ってくれた。今作は前著よりももう少しミクロに寄った内容で、個別事例や労働者視点でのキャリアプランにも触れられている。その中でも、「就社より就職」という最近一部でまことしやかに語られている俗説に流されることのない、日本の総合職の仕組みを上手く利用する就社の提案は、それなりにサラリーマン経験を積んだ今でこそ頷ける。就職活動中の学生などにもぜひ読んでもらいたい。
book

森川方達, 帝国ニッポン標語集 戦時国策スローガン・全記録

戦時中のスローガン4237句をまとめただけの本なのだが、下手な歴史書よりも、その時代のムードがよく伝わってくる。
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安田敏朗, 国語審議会 迷走の60年

国語審議会の歴史を追ってみると時流に流された "迷走" としか言えないものであった。効率を重視する "現在派" と歴史や文化を重視する "歴史派" との対立が迷走の大きな要因であるものの、そのバランスが世間の空気や政治的な意図によって大きく揺れ動いてきた様子がよく分かる。
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晴山陽一, 英語ベストセラー本の研究

戦後60年間分の英語ベストセラー本を時系列順に追ったもの。この英語学習本という視点が実に素晴らしく、単に英語学習法の流行り廃りが見えてくるだけではなく、日本人にとって英語とは何であるかという位置付けの移り変わりまでもが見えてくる。
book

柴野京子, 書棚と平台 出版流通というメディア

現在の日本の出版流通がどのように成長してきたのかが学術的に検証されている。雑誌や教科書に始まるメインストリームはもちろん、赤本の歴史や書店の "読書空間" の変遷まで、出版流通史の大きな流れが俯瞰できるようになっている。本好きの人間ならば一度は必ず目を通すべき本。おすすめ。