sociology

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小島健一, 社会科見学に行こう!

首都圏外郭放水路に始まり、高エネルギー加速器研究機構、核融合科学研究所など、男のロマンを感じさせる見学先の数々に心躍る。一つ一つの施設の紹介は10ページにも満たず、また大きめの写真が多いので、あまり読み応えはない。そういった施設の紹介そのものよりも、社会科見学という行為自体への誘いという位置づけなのだろう。そして、その取り組みは成功している。また、さりげなく開田夫妻が参加しているのもポイント。
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田中秀臣, 不謹慎な経済学

経済に関する16本の独立したコラムをまとめた本。あまり "不謹慎" というほどでもなく、まっとうな経済学の内容。
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紀田順一郎, 東京の下層社会

ほんの少し前、昭和戦前頃の東京の極貧階層がどのような生活をしていたのか。東京三大スラム、残飯生活、もらい子殺し、搾取される娼妓達、製糸工場の女工のタコ部屋など、読むだけで気分が悪くなる内容。しかし、これが高々100年前の現実なのだ。極貧階層の生活だけではなく、当時の福祉政策のお粗末さについても十分な記述があり、よく理解できる。おすすめ。
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海部美知, パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本

便利さや豊かさでは世界トップクラスである日本に閉じこもり、海外へのあこがれを持たなくなった現象を "パラダイス鎖国" と名付け、分析している。自身も仕事上必要のあるケースを除いて海外に行くメリットをあまり感じておらず、この感覚は非常に共感できる。また、このパラダイス鎖国に陥るまでのストーリーの分析も納得のいくもの。
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山田邦紀, 明治時代の人生相談 100年前の日本人は何を悩んでいたか

明治時代の新聞や雑誌の人生相談欄を抜き出したもの。あまり堅苦しくなく、また著者のコメントや注記も適切で、サクサク読める。当時の風俗が感じられる相談をうまく拾っており、実に興味深い。
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山形浩生, 要するに

山形浩生氏の雑文集。山形道場の連載を中心に、ケーザイのネタが多めなのが嬉しい。"世の中講座" の企業の仕組みなどは、今となっては世間の合意を得ている内容かと思うが、それを2000年前後に読みやすい形で (まさに "要するに" という内容!) 世に出していたのは素晴らしい。
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島田裕巳, 日本の10大新宗教

新書のボリュームで10もの新宗教を取り上げる以上、一つ一つの内容は薄めで、新宗教の成り立ちをざっと眺める程度。とはいえ、多くの新宗教に共通する新宗教の成長に欠かせない要素などは垣間見ることが出来る。この手の本をみると、俗物根性として方々で話題に挙がるカルトすれすれの新宗教を期待してしまうのだけれど、そういった新宗教は落とされているのが残念。
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藤和彦, 石油を読む 第2版 地政学的発想を超えて

石油はもはや戦略物資などではなく、国際市場で流動的に取り引きされるコモディティであるという主張。地政学的なリスクよりも、投資マネーの動向による価格変動のリスクの方がはるかに大きいという点は同意できる。現在の国際石油市場の様子、OPECやメジャーの凋落など、この一冊で現在の石油を取り巻く状況がよくわかる。おすすめ。
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川崎昌平, ネットカフェ難民 ドキュメント「最底辺生活」

ネットカフェをテーマにした本なのだけど、著者は好きでそんな生活をしているようにしか見えない。それなりに学歴も技術も知識もあり、その気になれば実家にも戻れる様な立場だからか。"高等遊民" という言葉が何となく思い浮かぶ。
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佐藤尚之, 明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法

著者の佐藤尚之氏は、あのスラムダンクの1億冊突破感謝キャンペーンを担当された方。消費者が広告を受け取ってすらくれない時代に、広告はどうあるべきか。"消費者をもっとよく見る" という当たり前のことがいかに重要であるかを思い知らされる。また、ネット上ではテレビや新聞はもう過去のメディアであるかのような扱いをしている人も多いが、それらの昔ながらのメディアもまだまだ可能性を秘めていることを感じさせてくれる。おすすめ。