クリケットワールドカップで、初めてクリケットを観た

お世話になっているインド人の教授から “most important event of the decade” というメールが来て何事かと思ったら、今夜はクリケットワールドカップ準決勝のインドvsパキスタン戦だから家でパブリックビューイングするぞ、とのこと。今まで仕事関係でこんなに熱いメールをもらったことがない。

クリケットは観たこと無いけどせっかくだから一緒に観てみるか、と思ってメールをよく見ると、こちらの時間で深夜02:00から翌朝10:00の開催 (現地時間では14:30の試合開始) 。今日は平日なのだけど。しかも、教授は昼から普通に講義があるはずだけど。

やはり世界の晴れ舞台というのに加えて宿敵パキスタンとの対戦ということで国民的行事らしい。このあたりの温度感が外人には良くわからないが、サッカーの日韓戦を強力にした様なものか。ちょっと調べてみると、

  • 試合当日は10億人が病欠する
  • 試合中は (みんな自宅でテレビを観ているので) ムンバイ名物の渋滞が無くなる
  • サッカーのアーセナルvsマンチェスター、イングランドvsアイルランド、トルコvsギリシアよりも大きなイベント
  • インドとパキスタンの首脳が勢揃いで観戦

などと威勢の良い言葉がずらずらと。これらが単なる修辞でなさそうなところがさすがインド。

夕方に帰宅してから少し仮眠し、さて着替えて出かけるかと思ってメールを読み返すと “青い服を着てこい” との指示が。慌ててネットで調べると、インド代表チームのユニフォームは西武ライオンズ的な青 (ちなみにパキスタン代表は南海ホークスのビジター的な緑) 。クローゼットの奥から何とか近そうな色のシャツを見つけて出発。

集まったのは過半数がインド人。他の研究室の人も多い。さすがにパキスタン人はいなかった……と思う。いや、阪神ファンの集まる店に巨人ファンを放り込む様なものなので呼ばない方が良いとは思うけど。

プロジェクタを持ち込んでWillow TVを映しての観戦。クリケット専門のネット放送局があるというのを初めて知った。世界は広い。画質も十分で、プロジェクタでの鑑賞にも耐えうる。投球の合間をみて短いCMが挿入されるのには少々閉口したが。なぜか旅行代理店と海外送金のCMばかりだった。

クリケットの試合をまともに見たのは初めて。野球の親戚の一つ (異説も多いが、このエントリの本題ではないのでツッコミ不要) というくらいの知識しかなかったが、いざ観てみると本質的な部分で異なる競技。

まず最初に感じたのが、どちらが攻撃側かが不明確に見えること。点を入れるときが攻撃というのならばバットを持っているストライカー側が攻撃に当たるのだが、実際には投球側がウィケットを攻めているのをバットで守るという側面がある。ストライカーはウィケットから外れた球に手を出す必要もなく、無理に安打を狙う必要もないためにそう感じる。もちろん野球も打者が投手からストライクゾーンを守っていると言えるのだが、クリケットでは許される安易な見逃しや凡打がルール上認められておらず、ファウルで粘り続けるのも現実的ではないので、あまり守りと感じさせない。

守備位置の自由さも野球に慣れた目には新鮮。野球も打者の左右で守備位置を調整したり、走者の状況で前進守備をとったり、特定の強打者に対してシフトを敷いたりといったことはあるのだが、基本的にはある程度ポジションが固定されている。一方クリケットは360度どこに打っても良いため、これといったポジションが固定されていない。もちろん、ウィケット・キーパーを置いたり、ストライカー近くにポップフライを捕まえるための選手を置いたりといった基本的な戦術はあるものの、ストライカーに合わせて柔軟に配置している。これを見ていると、野球の守備位置も現在の内野手4人+外野手3人というポジションが固定観念に囚われすぎているのではないかと思えてくる。

一つだけ物足りなさを感じたのは、クリケットはほとんど状態を持たない競技であること。野球の場合は走者の有無が非常に重要であり、その状態によって取り得る戦術が大きく変わってくる。それに付随して打順が大きな意味を持っている。もちろん、ストライクやボール、アウトといったカウントの状態も戦術に影響を与える。これらが野球の魅力となっていることは間違いない。一方、クリケットはストライカー、ノンストライカー、ボウラーが誰であるのかと、せいぜい点差がどれだけあるのか (点差の大小で戦術が変わってくるのかはまだ良く理解していない) といった程度しか状態を持たない。次打者に状態が引き継がれることもないので、打順の意味も野球に比べると希薄となる (ストライカーとノンストライカーの相性はあると思われるが、それがどの程度重要なのかは良くわからない) 。そのため、単に最も期待値の高い打ち方をすることのみが合理的となり、深みに欠けている様に感じる。

試合は実際に8時間以上かかった。途中からワーグナーのオペラを観ている様な気分になった。

今週土曜日早朝はスリランカ代表との決勝戦。翌日が休みなのが救いか。

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