ケネス・S・ロゴフ(著), 村井章子(訳), 現金の呪い 紙幣をいつ廃止するか?

高額紙幣を廃止しレスキャッシュ (キャッシュレスではないことは再三言及されている) を実現することで、現金の犯罪利用を減らし、同時にマイナス金利などの金融政策が可能となるという主張。

平易な文章ながら専門的な議論もしっかりと押さえられており、データの裏付けも豊富。様々な公的調査を組み合わせる搦め手で現金がどのように利用されているかその実態をあぶり出しており、発行枚数と各家庭の実際の現金所有との大きなギャップから非合法な目的の現金利用を推定している。

高額紙幣の廃止によるレスキャッシュで、これらの非合法な現金利用を抑制できると共にマイナス金利をはじめとする金融政策の自由度が上がる点もしっかりと議論されている。無記名持参人払いのゼロ金利債である紙幣の保管コストが上がれば、そのコスト程度のマイナス金利は容認され得るとする議論は説得力がある。紙幣から電子への移行も、変化と波乱に満ちた貨幣の歴史を考えると、驚くにはあたらない。

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