棺桶リストのすすめ

棺桶リストの効用と運用方法

棺桶リストという言葉は聞き慣れない方も多いかと思う。これは、映画 “最高の人生の見つけ方” で有名になった方法で、いわゆる “死ぬまでにやることリスト” を指す。映画ではこれをkick the bucketの慣用句から派生したBucket Listと呼び、日本語訳ではそれを棺桶リストと意訳していた。

この棺桶リストを作る効用は外部化にある。文章を書く方はご存知だと思うが、頭の中にアイディアがあることと、それを書き出して外部化することの間には大きな隔たりがある。書き出す過程の中で、考えが整理され、肉付けされ、具体化され、自覚されていくものだ。

棺桶リストは一度作って終わりではない。これを定期的に見直し、メンテナンスし、常に意識することが肝要である。日々の忙しさにかまけてしまうと、せっかく作った棺桶リストもあっという間に記憶の彼方に飛ばされてしまう。私はGTDのタスクとして定期的に見直すことで、常に自分のやりたいこと、やるべきことを意識している。

棺桶リストを作るコツ

棺桶リストの作り方は単純に自分が死ぬまでにやりたいことを書き出していくだけである。とはいえ、普段特にやりたいことを意識せずに過ごしていると、この作業がなかなかに難しく、少々コツがいる。”棺桶リスト” や “Bucket List” で検索するとその作り方やアイディアが見つかるが、私なりのやり方を書いておく。

まず、書き出す道具を準備する。紙でもPCでもスマートフォンでも、好みのもので構わない。ただし、大量に書き出してから整理するプロセスが不可欠なため、紙ならば多めに用意し、電子機器ならば編集しやすいものを準備するのが良い。

次に、集中できるまとまった時間を確保すること。鍵のかかった部屋など、割り込みが入らない環境ができれば完璧だ。棺桶リストを作ることは、自分を振り返ることでもあり、想像以上の時間を要する。初回は最低でも数時間程度は確保しておくことを勧める。一度作ったものをメンテナンスしていく作業はスキマ時間でも構わない。

記録手段と時間が確保できたら、最初は整理せずに思いつくままやりたいことを書き出していくのが良い。整理や体系化は後で良いので、とにかくやりたいことや、やらないと死ぬ間際に後悔しそうなことをどんどん書き出していく。この際に、お金や時間や体力の制約も一切考えず、少しでも興味があることはすべて書き出す。件数も気にせずに、この段階では多ければ多いほど良い。重複があっても気にしない。私も初回は3桁の項目を書き出している。

書き出した上で、重複しているものや親子関係にあるものなどを整理していく。書き出したものの気乗りしないものは思い切って削除する。この際に併せてグループ化しておくと、見直したり実施していくのに便利だろう。 この整理の過程で自分のやりたいことが見えてくることもある。例えば、旅行に関する項目が多いことに気づき、自分の興味を再発見することもある。

一度たたき台ができてしまえば、あとのメンテナンスは比較的容易である。ただし、定期的に見直すきっかけを仕込んでおくのだけは忘れないように。

それでも書き出せない人のために

白紙と向き合って見ても、なかなか書き出せないという人もいると思う。それでも何をやりたいのかを自分に問い続けるのが重要だが、書き出すきっかけとなる項目を挙げておく。もちろん、これに縛られる必要はまったくない。

旅行

新しい場所に行ってみたい、というのは人間の自然な欲求である。それでいて、旅行というものはそれなりにまとまった時間を必要とするため、日々を忙しく過ごしていると後回しにしがちである。それだけに、棺桶リストに書き出して常に意識しておくことに意味がある。

地球の裏側まで遠出する必要は必ずしもない。子供の頃を過ごした場所、電車に乗ってしまえば1時間程度なのになかなか帰っていない実家、お気に入りの映画のロケ地、どこでもいい。

消費

棺桶リストを書く際に変に構えてしまうと意識の高いことばかりを書いてしまいがちだが、もちろんそんな必要はない。美味しいものを食べる、好きなライブに行く、高級車を乗り回す、漫画喫茶で心ゆくまで漫画を読む、高級ホテルに泊まる、これらの俗な消費も立派な活動である。

挑戦

ライフワークと言えるものがある人は、それも書き出してみる。フルマラソンを完走する、徒歩で日本縦断する、モノポリー世界一になる、といった大きな目標はきっと人生の張り合いになる。もちろん、徒歩で山手線一周、家庭菜園を作る、魚をさばいてみるといった身近な挑戦でも構わない。

勉強

試験に受かるためという制限がなければ、本来勉強は楽しいものである。トリリンガルになる、大学の面白そうな講義に潜る、ロンドンへ遊学する、プログラミングの勉強をする、地元の歴史書を紐解く、どれも素晴らしい体験になる。アカデミックなものでなくとも構わない。

ものづくり

能動的に何かを作る行為も人生を幸福にする。本を書く、iPhoneのアプリを作る、作曲をする、マンガを描く、いずれも人生の時間をつぎ込む価値がある。それでいて、常に意識していないとなかなか進まないものである。

ビジネス・資産構築

ビジネスを通じて社会に貢献するのも人生をかけるに値する目標である。もちろん起業だけがビジネスではない。経済の勉強をして投資する、その企業の株主総会に出て質問をしてみるなども立派なビジネスである。不動産や実物資産への投資も良い経験になるだろう。

ボランティア

戦地に赴くような高尚なものでなく、近所付き合いの延長的でも良い。子供がいる方は、PTAの役員なども良い経験になるかもしれない。犬や猫の里親になるのも立派な社会貢献のボランティアだ。時間が割けない場合は、肌が合う慈善団体にまとまった額の寄付をするのも良いかもしれない。

人間関係

「また今度呑もう」と言ったきり10年も会っていない友人はいないだろうか。そういった友人を今誘わないと、このまま一生会えないかもしれない。これもまた、常に意識していないと後回しにしてしまう種類の行動である。

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