表題通り、カレーライスを自分たちの手で一から作ろうという試み。武蔵野美術大学の関野吉晴ゼミでの1年間の取り組みをまとめたもの。
企画としては単純に面白いのだが、大学で実施する目的もルール設定の意図も最後まではっきりしない。一応のルール設定として、1年間の学期の範囲内で、自然の中から採取するか一から育てるかして、カレーライスの材料をすべて揃える、という方針が示され、このあたりまではまだ納得感がある。しかしながら、育てる場合はなるべく “自然” に近い形で化学肥料や農薬は使わないという追加ルール (さらに後半には、自家採種できる種を選択していたり、遺伝子組み換えのトウモロコシが含まれる可能性がある配合飼料も避けている記述もある) がなんの説明もなしに出てくるあたりから、”自然” というものの定義が気になってくる。人工物そのものの田圃で田おし車を使って除草することは問題視していないようなので、基準が今ひとつわからない。著者自身も少しは疑問があったのだろうか、
関野さんも、どうしてそんなルールを提案したのか、くわしい説明はしない。活動を通して自分たちで考えてもらいたいということなのだろうか。
と述べているあたりに良心を感じる。
コメント