第二言語習得 (Second Language Acquisition) 研究の啓蒙書。第一言語 (母語) 習得はほとんどの人が成功するのに対し、第二言語習得の結果は人によって様々なのはなぜなのか、という疑問に対する研究を複数の観点から紹介してくれる。
第二言語習得の成否が単純な知能・知性 (いわゆるIQ) で決まるかというとそう単純なものではなく、知能・知性とは独立した外国語習得特有の適正というものが存在するようだ。また、言語能力というものも、日常言語能力と認知学習言語能力に分けられ、特に前者は知能・知性とは相関が低いとされる。これらの結果は多くの人の直感とも一致するだろう。
年齢が第二言語習得に大きな影響を与えるのは間違いなさそうだが、思春期 (12-13歳) を過ぎると学習が不可能になるという臨界期仮説はまだ研究者間でも意見が割れている。また、年齢と学習環境 (これも当然年齢の影響を強く受ける) のどちらが影響しているかもはっきりとはわかっていない。例外的に思春期を過ぎてから成功する学習者もいるが、これは膨大な数のフレーズを覚えて使いこなせる高い記憶力が重要とされる。
本書後半はより具体的な学習法も論じている。現在の日本の学校で主流となっている文法訳読法式は英語を日本語に訳す力を養う上では効果的ではあるものの、コミュニケーションで使える英語を学ぶためにはあまり効率が良くない。とはいえ、英語をある程度読む力さえあれば教えられる文法訳読法式は簡単にはなくならないだろう。
では、話したり書いたりというアウトプットを増やせば言語能力が向上するかというと、そのエビデンスもあまり出ていない。アウトプットはすでに知っている知識を使って何かをするにすぎないため、インプットなしにアウトプットばかりを増やしても言語習得は進まない。
効果的な外国語学習法として、分野を絞ったインプット、例文暗記、コミュニケーション・ストラテジーの習得などが挙げられている。これらの手法は科学的な裏付けもあり、自分の経験とも合致している。

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