大河内直彦, チェンジング・ブルー 気候変動の謎に迫る
気候変動の研究は様々な科学技術の集大成である。地質学はもちろんのこと、生物学、物理学、化学、あらゆる分野の発見が気候変動の研究に新たな知見をもたらす。観測技術の進歩により新たな研究が可能となることも多く、新たな発見により定説が覆り続けている。本書はそうした歴史を誠実に描いたものである。
研究者の手による本であり、参考文献による裏付けがしっかりしているので安心して読める。それだけではなく、図版が非常に豊富なのが一般読者にはありがたい。科学的な内容だけではなく、関係する科学者たちの素顔が垣間見えるのも嬉しい。
気候変動の問題は地球温暖化の文脈に組み込まれ政治問題化しているが、そこに与して短絡的な二酸化炭素悪者論に陥るようなこともなく、現在確からしいと思われている事実に基づいた誠実な解説を行っている。
木村公一, 裏方 物言わぬ主役たち プロ野球職人伝説
トレーナー、グラウンドキーパー、ブルペンコーチ、グラブメーカー (ハタケヤマの畠山佳久)、スコアラー、スカウトと、プロ野球界の裏方にスポットを当てたドキュメンタリ。ジャーナリズムかくあるべし、といった一冊。
大竹文雄(編著), 白石小百合(編著), 筒井義郎 (編著), 日本の幸福度 格差・労働・家族
大量のパネルデータを駆使して主観的幸福感に影響を与える要因を探る研究書。経済学の知識がなくとも読める内容だが、最低限の統計学の知識は必要。
日本のように所得の高い国では所得の増加が幸福度に与える影響は小さい、世帯所得が大きいほど幸福であるがその増加は逓減的である、資産額が増加すると幸福度が上昇するが2000万円程度で飽和する、健康な人は有意に幸福、利他的な人ほど幸福、など、多くの結果は直感と一致する。一方で、男性は女性より不幸であるが喫煙習慣をコントロールすると有意差がなくなる、時間割引率が高い人ほど不幸である、危険回避的な人ほど不幸である、といった結果は解釈の余地があり興味深い。
バン・K・タープ(著), D・R・バートン・ジュニア(著), スティーブ・ジュガード(著), 柳谷雅之(訳), 井田京子(訳), 魔術師たちの投資術 経済的自立を勝ち取るための安全な戦略
まだFIREという言葉が流行る前の本ながら、経済的自立を達成するまでの道のりを扱っている。節約による種銭の確保からパッシブ収入の確保まで一通りを解説しているのは良い。しかしながら、資産運用の利回りはかなり楽観的で、ミューチュアルファンドや不動産投資を本書の通り行うことで超過利益が得られるという主張を鵜呑みにするのは危険だろう。また、米国の事情に依存した部分が多く日本人が取り込むには色々と工夫が必要となる。何かにつけて著者らのIITMのサイトなどへ誘導しようとするのにも閉口する。