元永知宏, 殴られて野球はうまくなる!?

野球界、特に高校野球を中心に蔓延している暴力に踏み込んだドキュメンタリ。その暴力の功罪を様々な側面から描いている良書。

まずは強豪野球部で日常的に暴力が振るわれている実態を著者自身の体験と経験者へのインタビューから暴き出す。特に能力のある新入生が真っ先に狙われる実態など、暴力を振るう側にそうさせるインセンティブがある構造も見えてくる。

一方で少ないながらも肯定的な意見も取り上げられている。私は肯首できないが、愛のある暴力は暴力ではないと本気で信じている人々がいるのも伺える。彼らがなぜそういった心理状態に陥ってしまうのかを掘り下げられるともう少し深みが出たのではないかと思う。

最後に対照的なラテンアメリカの指導の紹介と、日本との差異が生まれる原因の考察が行われる。根底にトーナメント制で勝ち上がるための勝利至上主義や部員が多すぎる弊害があるというのは説得力がある。

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