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馬場裕一, 黒木真生, 片山まさゆき, 馬場裕一の見た夢

期せずしてか遺作となってしまった。ほぼ再録で新規の記事や漫画は少ないが、馬場裕一の足跡を辿る上では欠かせない本になる。良くも悪くも日本の麻雀界とともにあった人なので、後に麻雀史を編纂する際には貴重な資料となるだろう。
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布施直春, 自分の時間、お金、権利を守る! 「武器」としての労働基準法

労働基準法は比較的シンプルで、ノーワーク・ノーペイ、労働基準法>労働協約>就業規則>労働契約の順に優先 (ただし労働契約に就業規則よりも有利なことが書かれている場合はそちらが優先)、といった原則だけ押さえておけば、あとは応用問題となる。こうした基礎に加え、男女差別 (日本ではポジティブ・アクションは認められている)、副業禁止規定 (判例上は私企業の労働者の副業は禁止されていない) といった身近な問題も取り上げられており、労働者は一読する価値がある。
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大村大次郎, 脱税の世界史

国家につきものの税金だが、その歴史は常に脱税と共にあった。古代ギリシャからビートルズまで、古今東西の脱税を取り上げている。著者は元国税調査官ということもあり、徴収側の理屈に偏っているのは注意。
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村田沙耶香, コンビニ人間

芥川賞受賞作ながら、純粋に読んで面白い作品。画一的で清潔で無機質なコンビニという存在と重ね合わされた主人公の存在が読み手の心を強く揺さぶる。
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コペンハーゲン出張

久しぶりの海外出張。北欧を訪れるのは初めて。アジア系はさすがに少ない。直行便が少ないせいか少なくともコペンハーゲン周辺は現金なしでも問題なく過ごせる。タッチ決済対応のスマホがあれば完璧電車の切符もクレジットカードで買える。電車は改札がないが、無賃乗車が発覚すると多額の罰金を取られる欧州によくあるパターン英語だけで問題なく生活できる。看板やメニューはデンマーク語のみのものも多いが、大半が英語話者のためなんとかなる物価は高い。最近の物価高の日本と比較しても5割増から2倍の感覚都市...
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レガシィマネジメントグループ, 100億円相続事典 1億円との徹底比較で見えてくる違い

目の付け所は良い本だが、繰り返しのネタが多く水増し感がある。100億円規模の富裕層は大きく相続組と起業組に分かれるが、両者が混ざって記述されているので混乱を招いている。同様に1億円の富裕層も資産運用に成功した人々とそれらには手を出さずに出世とマイホーム購入で無意識に富裕層になった人々が十把一絡げになっている。
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白井恭弘, 外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か

第二言語習得 (Second Language Acquisition) 研究の啓蒙書。第一言語 (母語) 習得はほとんどの人が成功するのに対し、第二言語習得の結果は人によって様々なのはなぜなのか、という疑問に対する研究を複数の観点から紹介してくれる。第二言語習得の成否が単純な知能・知性 (いわゆるIQ) で決まるかというとそう単純なものではなく、知能・知性とは独立した外国語習得特有の適正というものが存在するようだ。また、言語能力というものも、日常言語能力と認知学習言語能力に...
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大内伸哉, どこまでやったらクビになるか サラリーマンのための労働法入門

タイトルからはサラリーマンがどこまで攻められるかという指南本を想像してしまうが、中身はかなりまっとうな労働法の事例集。賃金、労働時間、転職など、労働者が直面する問題は一通りカバーされている。
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柳治男, <学級> の歴史学

現代の日本の公教育で当たり前となっている "学級" だが、中世までの学校には存在しないものであった。当時は教室 (class room) すら存在せず、ひとつの教場 (school room) にまちまちの年齢の生徒が集まって教育を受けるのが一般的であった。本書は学級制に基づく学校、すなわち義務教育制度が成立する過程を丁寧になぞり、その上で現代日本の学校がはらんでいる問題を明らかにするものである。学級が存在するにはその前提として学習内容を時間割として定めておく必要がある。これ...
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クリフォード・A・ピックオーバー(著), 川村秀憲(監訳), 佐藤聡(訳), 人工知能 グラフィックヒストリー

広義の人工知能の歴史を俯瞰できる本。原著が2019年の発行のため、LLMは触れられていないが、ディープラーニング (1965年) は取り上げられている。見開き1トピックの構成で、グラフィックヒストリーの名の通り歴史的な画像やイラストが添えられている。画像も含めて出典が一覧になっているのも嬉しい。