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長沼伸一郎, 現代経済学の直観的方法

現代経済学と銘打っているが中身はほぼマクロ経済学で、ミクロ経済学はほぼ触れられない。それでも、古典派経済学とケインズ経済学の基礎を大づかみするという目的だけに絞れば良書といえる。それぞれの経済学の生まれた時代背景も添えられているのもわかりやすい。最後の第9章のみは既存経済学の解説から離れて自説を展開しており、他の部分とだいぶ毛色が異なるので注意が必要。著者の専門である物理学の縮退や囲碁の概念を用いて経済を説明しようという試みは面白いが、別の著作で展開するべきだったと思う。
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中村富士美, 「おかえり」と言える、その日まで 山岳遭難捜索の現場から

山岳遭難捜索チームLiSSの代表を務める中村氏による実録レポート。看護学校で学んだというプロファイリング術を駆使して遭難時の行動を推測していく様子は推理小説のよう。もちろん、登山者の心得としても役に立つ。欲を言えばもう少しボリュームが欲しいところで、ここは続編に期待する。
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小林銅蟲, やせましょう 40歳漫画家が半年で15kg本気(マジ)ダイエットした記録

で大増量となった小林銅蟲がダイエットに挑む企画マンガ。本人登場のエッセイマンガの体裁なので、めしにしましょうよりはやや常識寄り。それでも、科学信仰がありながらも極端に走る著者のおかげで、それぞれのダイエット法の限界を知ることができる。
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ThousanDIY, 「100円ショップ」のガジェットを分解してみる! 安さに隠された秘密を解明!

主にPC関連のガジェットを分解する企画本。分解して終わりではなく、きちんと回路図まで起こしているのが素晴らしい。価格が価格だけにもちろん割り切った仕様はあるのだが、今どきは100円ショップガジェットでも安全性を確保した真っ当な作りになっているのがよく分かる。
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石川伸一, 料理と科学のおいしい出会い 分子調理が食の常識を変える

新しい料理を生み出す分子調理の啓蒙本。分子調理は化学だけではなく、物理学、生物学、工学、心理学など様々な科学分野を総動員した学際領域と言えるが、その概要を一冊で掴むことができる。凍結含浸法や高圧処理などの最新の調理技術への目配りも怠りない。
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Hayato Ito, 普通の人が資産運用で99点をとる方法とその考え方

同名のサイトに加筆して書籍化したもの。資産運用自体の考え方自体はまともなので、普通の人に勧めるには良い本だろう。ただし、税に関する記述に粗があるのは注意。いざとなればいつでも逃げられるNISAはまだしも、iDeCoのように長期間資産を拘束されるにもかかわらずコロコロ変わる仕組み (実際に退職所得控除の改悪が迫っている。特別法人税もいつ復活してもおかしくない) に対し、そのあたりの説明なしに無条件で最優先に投資するように勧めるのはあまりに楽観的すぎると思う。
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鈴木雅光, お金の防災マニュアル

自治体から配られるパンフレットに毛が生えた程度の内容だが、必要な事項は一通りカバーされている。防災というと食料や衛生用品にばかり目が行きがちで、お金は盲点になりやすい。特に最近は電子マネー花盛りのため、現金をいかに備え、必要に応じて引き出せる算段をしておくかは見落としがち。特にフルインベストメントで資産運用をしている人は、有事の際にいかに現金化して引き出すかも考えておいたほうが良いだろう。
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安藤清, 土屋守正, 松井泰子, 例題で学ぶグラフ理論

とあるYouTubeçチャンネルでも教科書として使われていた入門書。集合論などの離散数学の基礎はそこそこに、グラフ理論に特化した内容。主要なアルゴリズムがきちんとカバーされており、演習問題も豊富なので、プログラミングをしながら独習するのにおすすめできる。
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Seymour Lipschutz(著), Marc Lipson(著), 渡邉均(訳), マグロウヒル大学演習 離散数学 (改訂3版) コンピュータサイエンスの基礎数学 単行本

定番の教科書だが、2024年6月に改訂されていたので購入。まずは組版が今風になったのが目に付く。旧版も味があって良かったが、さすがに古さを感じていた。旧版同様に豊富な演習問題が付属しているが、さすがに古い計算機を前提としたものは整理された。離散数学の教科書としては、言語やオートマトン、有限状態機械とチューリングマシンまでカバーしているのが特徴的。計算機のために離散数学を学ぶ学生にも勧めやすい。また、日本語版には代数系と暗号の解説が付属しているのも嬉しい。
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エドワード・ブルック=ヒッチング(著), 関谷冬華(訳), 井田仁康(日本語版監修), 世界をまどわせた地図 伝説と誤解が生んだ冒険の物語

かつては存在すると思われており地図にも描かれてた幻の土地を集めたもの。時代も地域も無関係にアルファベット順に並べられているので、先頭から読んでいくだけで目先が変わって楽しい。単純な誤りだけではなく、伝説を地図に描いてしまったものや金銭目的ででっち上げられたものなど、その理由は様々。こうした地図上の誤りは昔のことと思われがちだが、21世紀になるまでその実在が信じられていた島まであるのが興味深い。日本の近郊では、朝鮮半島が半島ではなく朝鮮島として描かれた1595年の地図が面白い。...