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朝日新聞取材班, 負動産時代 マイナス価格となる家と土地

人口減少・高齢化の中で必然的に発生する家余りにスポットを当てたドキュメンタリ。負動産に関する諸問題がコンパクトに詰め込まれた良書。登記制度の問題から相続人が増え続けて身動きが取れなくなった不動産の実例を皮切りに、バブル期に乱造されたリゾートマンション、需要を大きく超えた建築ラッシュを生んだサブリースアパートなど、様々な不動産問題を扱う。それを面白おかしく取り上げるだけではなく、登記制度、不正確な公図、対策特別措置の限界など、それらの問題を生み出す構図にも踏み込んでいる。さらに...
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猫組長, 西原理恵子, 猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言

元経済ヤクザによる経済コラム。西原理恵子のマンガは巻頭のみ。すぐに活用できるようなネタは多くないが、読み物や話のネタとしては満点。その中で、HSBC等の海外口座開設の審査の通し方は数少ない実用的な内容。
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お股ニキ(@omatacom), セイバーメトリクスの落とし穴

タイトルからはセイバーメトリクスの問題点を取り上げているかと思えたが、そのような部分はほんの4ページほど。それも、セイバーメトリシャンがデータだけを絶対視しており解釈や切り口を軽視しているという先入観に基づく批判であり、さすがに言いがかりだろう。本書の大半を占める野球エッセイはほぼエビデンスがなく、ところどころ示される数値も他の研究の借用。そのエビデンスがない点は他の方からも指摘を受けているらしいが、こうした話をすると「エビデンスはあるのか」「無意味な練習はない」とよく言われ...
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阿部珠理, メイキング・オブ・アメリカ 格差社会アメリカの成り立ち

アメリカ先住民の研究者が描く、アメリカの不平等社会の成り立ち。白人とインディアン、ピューリタンと非ピューリタン、南部貴族と黒人奴隷、ワスプとマイノリティ、資本家と労働者など、アメリカの歴史が格差の歴史そのものであることがよく分かる。それでも救いがあるのが、持たざるものにも社会上昇の機会があること。例えば、新たにやってきた移民労働者は労働者ピラミッドの最下層を形成し、それまでの移民労働者はピラミッドを一段上昇するという社会構造が挙げられる。
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辣椒, マンガで読む嘘つき中国共産党

亡命中国人による共産党風刺マンガ。マンガ単体としての面白さはさておき、国内安全保衛に拘束された強烈な体験談など、中国共産党の実態を知るために有益な情報が多数。
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久松ゆのみ, ピコッとハニエル (1)

久松ゆのみがゆのみみっくす以外にも単行本を出しているのを知ったので今更ながら読む。1巻と書いてあるが、もちろん2巻は出ていない。いわゆる居候モノだが、居候先が一般人ではなくコアゲーマーなのがポイント。マニアックな小ネタが楽しい。
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青木雄二, ゼニの幸福論

マルクス主義者の著者らしく、マルクスの "働くものは儲けず、儲けるものは働かない" という言葉を引き合いに出し、人間、遊んで暮らすのが最高の幸福である。という実感を語る。この自然な感情は否定できない。とはいえ、労働の尊さが否定されるものではなく、"人に請われて仕事をすること" もまた幸福を感じるものだ。現在の生活が幸福かを判定する方法として、エンゲル係数を改良した青木係数を提案している。これは食費と住宅費が消費支出に占める割合を算出したもので、五割を超えているようであれば貧乏...
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トマス・J・スタンリー(著), 広瀬順弘(訳), 橘玲(序文寄稿), 1億円貯める方法をお金持ち1371人に聞きました

となりの億万長者の続編。それ以上資産が増えても幸福度が上がらない1億円 (100万ドル) をお金持ちの基準とし、それ以上の純資産を持つお金持ちの調査結果をまとめている。お金持ちは自身が経済的に成功した要因として、誠実、自己鍛錬、社会性、配偶者の支え、勤勉を挙げている。運の要素を挙げている人は少ない。対照群との比較がないのとsocial desirability biasを考慮していないように見える点が疑問ではあるが、世間一般のイメージとは異なる興味深い結果と言える。お金持ちの...
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藤子・F・不二雄, 藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版

家内から誕生日プレゼントとして全8巻セットをいただいた。子供の頃から朝日ソノラマ版を読んでいたが、かなり抜けがあったのでまとめて読み直せるのは嬉しい。収録作品も装丁もPERFECT版にふさわしい出来。内容は言わずもがな。
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丸山ゴンザレス, 世界の危険思想 悪いやつらの頭の中

殺人犯やドラッグユーザー、武器商人など、一般的な日本人とは異なった常識を持つ人々へのインタビュー集。労作という範疇を超えて大きなリスクをとった著作。彼らの思想は簡単に理解できるものではないが、彼らなりの理屈があり筋があることはわかる。これらを拒絶してしまうことは簡単だが、その思想に正面から向かい合うことで世界を少し広げることができる。