review

book

松原仁(編著), コンピュータ将棋の進歩

本棚を整理して発掘された1996年発行の幾分古い本だが、小谷善行による "コンピュータ将棋の今後" と題した予測が興味深いので紹介したい。この記事で小谷はコンピュータ将棋の棋力が最も強い人間 (最強の棋士) に達するのはいつ頃かを単純な外挿で予測しているが、結果としてこれが正解であった。コンピュータ将棋は1986年ごろにアマ10級程度の強さで始まり、この記事の描かれた1995年にはアマ2段近くの強さに達している。これはレーティングでは600と1700程度に相当するため、年率で...
book

SCRAP, 人狼村からの脱出 狼を見つけないと、殺される

リアル脱出ゲームで名を上げたSCRAPのゲームブック。既存の脱出ゲームの単純なゲームブック化ではなく、ゲームブックという形態を生かした完全新作となっている。いわゆる人狼をモチーフとしているが、ゲームブックの特性上、心理戦よりもロジックを重視する形式となっているので、人狼の名前にはあまり先入観を持たないほうが良いかもしれない。難易度はやや高めで、細かなメモは必須。付属の捜査シートへの指示された書き込みだけでは完全な謎解きは覚束ない。難易度が高い分、自力で解けた時の感動は大きい。...
book

谷崎潤一郎, 文章讀本 中央公論社版

もはや古典とも言える著作であり古文や漢文の知識までも要求されるが、その苦労をするだけの価値がある。実用的な文章と藝術的な文章を区別することなくすべての文章に共通する要素を抽出しているので、技術文書に応用出来る部分も多い。
comic

森川弘子, 年収150万円一家 毎日のこんだて

節約レシピをテーマとしたコミックエッセイ。マンガとして面白いかというと疑問ではあるが、時間に余裕があり節約を楽しめる人のレシピ本としては良い。
book

西尾泰和, コーディングを支える技術 成り立ちから学ぶプログラミング作法

現代のプログラミング言語で使われている各種の技術がどのように生まれてきたのかを歴史的な経緯から追っていく。最新の言語仕様だけを見ているとなぜこのような形となっているかわかりにくい機能も、どういった問題点に対する解決策として生まれてきたかを含めてみると腹落ちする。年配のプログラマからすると常識的と思われる様なことも多いが、それだけにわざわざ一冊の書籍としてまとめられているのは貴重。最新の言語からプログラミングの世界に入った人にはぜひ読んでもらいたい一冊。おすすめ。
book

児玉教仁, ハーバード流宴会術

どのあたりがハーバード流かはともかくとして、宴会TIPS集としては上々。ホスピタリティの考え方が全面に貫かれているのは好印象。
book

ジョエル・バーカー(著), 仁平和夫(訳), パラダイムの魔力 成功を約束する創造的未来の発見法

トーマス・クーンの著作を下敷きにしているが、著者の経験を生かした実例が豊富に加わっており非常に読みやすい。パラダイムが人間の思考をも支配してしまうことが良くわかる。
book

細谷功, 会社の老化は止められない 未来を開くための組織不可逆論

亜紀書房ZEROの連載が良かったので書籍の方も。いわゆる組織論の本だが、不可逆性に焦点を絞った説明は読みやすく、人間の老化のアナロジーも頷ける部分が多い。
book

矢野りん, デザインする技術 よりよいデザインのための基礎知識

デザインのキーワードをそれぞれ1~2ページで解説するスタイル。各項の記述があっさりしている点と、全体構造が見えにくく網羅的かが分からない点から、体系的に学ぶには向いていないが、アイディアを得るために眺める本としてはそれほど悪くない。
book

梶本洋子, 小林哲之, 藤井浩二, Wordでマスターする使えるビジネス文書 レイアウトの極意

Microsoft Wordだけで専用ソフト級の印刷物を作ろうという企画。オートシェイプを駆使して見事な絵を作り上げていくさまは感動的ですらある。ややバッドノウハウ的な技術も散見されるのはご愛嬌か。使用しているのはWord 2000だが、オートシェイプの使いこなしなど最新版でも利用できる技術が多い。ただし、ある程度デザインの基礎知識がある読者が想定されていると思われ、一切デザインの勉強をしたことが無い人が一冊目に読む本ではない。