review

book

岩村暢子, 家族の勝手でしょ! 写真274枚で見る食卓の喜劇

現代の食卓の実態を調査する "食DRIVE" の成果をまとめたもの。対象が対象だけに定性評価の手法を用いているのは問題ない。実験参加者に一週間分の食卓を撮影してもらい、その前後に質問紙調査とインタビューを行う方法も問題ない。問題は、その後の定性分析の過程が全く示されていないこと。そのために、著者が読者受けしそうな見出しを考え、それに合った都合の良い結果だけを抜き出している印象が拭えない。もちろん、きちんとした定性分析によって見出しとなる要素を抽出している可能性もあるのだが、本...
book

エドアルド・ポーター(著), 月沢李歌子(訳), 「生き方」の値段 なぜあなたは合理的に選択できないのか?

行動経済学の本だが、研究者ではなくジャーナリストがまとめた本ということもあり非常に読みやすい。原題の "The Price of Everything" が示す通り、扱われているテーマは実に幅広い。生命や幸福、信仰など、行動経済学の守備範囲の広さを感じさせてくれる一冊。
book

ジム・クレイマー(著), 井手正介(訳), 吉川絵美(訳), 全米No.1投資指南役ジム・クレイマーの株式投資大作戦

アクティブ投資寄りの株式投資本。テクニカルではなくファンダメンタルズ系。従来型の "Buy and Hold" ではなく、"Buy and Homework" により、適切な売り時を見抜こうという考え。この考えからも分かる通り、短期の投機的売買に肯定的であり、効率的市場仮説にはやや否定的。感情的には納得してしまいそうになる部分も多いが、定量的な分析が示されないのが致命的。著者の主観的な判断基準も多いため、自分で裏を取るのも難しい。内容とは関係ないが、原題の "Jim Cram...
comic

沙村広明, ハルシオン・ランチ (2)

ハルシオン・ランチの続編。深いサブカル知識を要求されるのは相変わらず。1巻の時点で破綻気味だったストーリーが完全に破綻しているので、一読しただけでは何も理解できない。読者を選ぶ作品。
book

橘玲, 臆病者のための裁判入門

外国人の知人が巻き込まれた小さな民事事件に関わることとなった著者による裁判録。外国人の代理人として関わっている立場のため、日本の司法制度の問題点が非常に客観的に見えているのが良い。実際に事件に巻き込まれた場合の対処方法も参考になる部分が多い。どういった機関にどの順序で相談に行くべきかはもちろんのこと、弁護士や裁判官がどういった行動原理で動いているかも非常に重要。後半は単独の事件からは少し離れて司法制度一般の話。前半の裁判録は橘氏にしては少し珍しい内容であったが、こちらは平常営...
comic

竹ノ内ひとみ, のれんをくぐりましょ。 (新訂版)

神楽坂の小料理屋の現役アルバイト店員である著者によるエッセイマンガ。なかなか一見では敷居の高い小料理屋の内情はやっぱり面白い。所々に入る神楽坂 (花街) の小ネタも楽しい。
book

畑村洋太郎, 続 直観でわかる数学

直観でわかる数学の続編。今回は数学と言うよりは算数と言ったほうが近いか。相変わらずの (数学者ではない) 工学者目線で、共感できる部分が多い。図版が多めでついさらりと読み流してしまいそうになるが、よくよく自分の頭で考えながら読むと得られる気付きが多い。
book

近藤好和, 騎兵と歩兵の中世史

太平記を中心に読み解き、室町時代の武具の変遷を追う。主眼はあくまでも武具に置かれており、そこから合戦の変化などを類推するスタイル。武具の図版も豊富であり、少し興味がある程度の素人が読んでも十分に楽しめる。唯一残念なのは、合戦の変化がなぜ起こったのかの理由付けがやや弱いところか。
comic

坂戸佐兵衛(原作), 旅井とり(作画), めしばな刑事タチバナ (5)

5巻になってもその勢いは衰えず。今回はほか弁がメインテーマだが、他の小ネタも充実。コロッケそばへの熱い想いは素直に共感できる。
book

野口大, 労務管理における労働法上のグレーゾーンとその対応

労務トラブル本の世界では労働者側に立った本が主流だが、こちらは徹底して企業経営者側に立った本。元々グレーゾーンが広い世界ではあるが、過去の判例から裁判所が重視する要素が抽出されておりわかりやすい。また、徹底して実務寄りの対処方法が示されている点も心強い。