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伏木亨, 飯島奈美, おいしさの秘密!

食の対談本なのだけれど、"おいしさ" という実体のよく分からないものを多少なりとも科学的に語られているのは面白い。
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内藤朝雄, いじめの構造 なぜ人が怪物になるのか

いじめを一つの社会的メカニズムから生じる普遍的な現象として捉えた分析。いわゆる "近頃の青少年" 型の精神論とは一線を画している。 いじめという現象の分析を踏まえた上での、新たな教育制度案も興味深い。学校の法化や学級制度の禁止といった案は、抵抗勢力は多そうなものの、単純な実施コストという点では実現可能な範疇でありかつ効果的に思える。
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野口悠紀雄(監修), 「超」整理手帳2010(黒)

今年も例年通り「超」整理手帳を購入。 今年はやなどいくつかバリエーションが増えたようだが、店頭で悩んだ末に例年通りのものを購入。手帳は毎日使うものだけに馴染んだところで来年は発売されないというのが怖いので、定番商品となるようならばもう一度乗り換えを検討しよう。 今年のバージョンは手帳ホルダの表面処理が変わって、少し皮っぽくなった。それは良いのだが、昨年版まで片隅についていた向き識別用のマークがなくなったのが微妙に不便。 手帳ホルダ以外の内容物は代わり映えなし。
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蔵本由紀, 非線形科学

非線形動力学の権威である蔵本先生による入門書。 新書だと思ってナメてかかるには難解な内容だが、それだけに知的好奇心が満たされる。
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内田百けん, 第一阿房列車

なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思う の出だしで有名な旅行記。 特に目的のないユルい旅に、内田先生とそのお供であるヒマラヤ山系のトボケた掛け合いと、脱力しながらもクスクスと楽しめる。
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中村秀樹, これが潜水艦だ 海上自衛隊の最強兵器の本質と現実

さすが元海自の潜水艦長が書いただけあり、潜水艦の存在意義からその実体まで良く押さえられている。 所々、身贔屓が過ぎる所や自衛隊批判が鼻につくが、これも愛の鞭だろう。潜水艦の入門書としては間違いなくおすすめできる。
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冷泉彰彦, 民主党のアメリカ 共和党のアメリカ

米国の二大政党の仕組みとそれぞれの対立軸は良く取り上げられるが、その原則では説明できないねじれの部分も多い。例えば共和党は小さな政府を指向しているにもかかわらず、なぜ小ブッシュ政権はあれだけの財政赤字を積み重ねてしまったのか、など。そういったねじれにいたった経緯や、歴史的な対立軸の推移などがきちんと押さえられているのは外国人にはありがたい。
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我孫子武丸, 殺戮にいたる病

実は全然読んだことのない ("かまいたちの夜" は一度だけプレイしたけど) 我孫子武丸の代表作とのことで読んでみたが、気持ちよく騙され、最初に戻っての二度目の読書を楽しんだ。 あまりミステリには詳しくないが、今はこの種の作品がトレンドなのだろうか。
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松原岩五郎, 最暗黒の東京

1893年に出版された "最暗黒之東京" を底本に、新仮名遣いに改め再編集されたもの。 著者の松原は文学者でもあったため少々文章が走りすぎるところもあり、単なるレポートと言うよりは記録文学といった趣。 場末の木賃宿、貧街、残飯屋、人力車夫など、明治時代の日本の底辺の記録が生々しく、とても高々100年前のこととは思えない。この時代の数少ない下層社会の生の記録であるので、ぜひとも読んで欲しい。
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奥野修司, 沖縄幻想

癒しの島、長寿社会といったイメージを持たれることの多い沖縄。そのイメージの裏にある実体は、3K産業 (観光、公共事業、基地) だよりの経済だった。 そういった実体を受け止めた上で、沖縄をどう開発して行くべきかの論は、沖縄に対する愛が感じられて実に興味深い。 なお、本書には同じ著者によるに関する記述が所々に出てくるので、併せて読んでみた方が良いかもしれない。