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クリス・ベイリー(著), 服部京子 (訳), 世界一の生産性バカが1年間、命がけで試してわかった25のこと

大学卒業後に1年間をかけてA Year of Productivity (AYOP) を実践した記録。成果は同名のWebサイト (現在はA Life of Productivityに改名) にもまとめられている。世の中でよく言われている生産性を向上させる方法を片っ端から試している。先延ばししたくなる要素の排除、(時間ではなく) 活力と集中力のコントロール、タスクの断捨離、ホットスポットリスト、シングルタスクの徹底、飲食・運動・睡眠の最適化。いずれも多くの自己啓発本が触れている...
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新庄耕, 地面師たち

今作のテーマは地面師。明示的には書かれていないが、積水ハウスの地面師事件から着想を得たのだろうと思われる。膨大な取材を重ねたことを伺わせる細かな描写の数々は著者の真骨頂と感じる。登場人物の造形も素晴らしい。
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鷲田小彌太, 大学教授になる方法

ユーモアあふれる文体からネタ本かと思いきや、意外に実用的な内容。書かれたのはバブル末期の1991年、もちろん国立大学改革など議論にも上っておらずポスドク問題も顕在化していない頃なので、まだ大学教授がおおらかな職業であった時代を感じる。また事例が人文系に偏っており、理工系は事情が異なるようにも思う。それでも大学教授という職業をモラトリアムという視点から見つめるというのは新鮮であり、今でもそれを志向する人は読む価値がある。大学教授の給与などが包み隠さず書かれているのも良い。
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冨田和成, 資本主義ハック 新しい経済の力を生き方に取り入れる30の視点

資本主義社会の攻略本。資本主義の未来を楽観視した上で、アービトラージを推奨する。金融資本の運用一辺倒ではなく、元手を生み出すための人的資本の形成に半分以上を割いているのが特徴。その上で課税や社会保障を "重力" と呼び、重力の大きい人的資本から重力の小さい事業資本へシフトしていくことを勧めている。金融資本の運用部分はプロと競合しにくい長期投資や新興銘柄を推奨。期限を切らない長期の大きな予測は概ね外れず、板が小さい新興銘柄はアービトラージの余地が生じやすい。また、金余りの世界で...
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尾藤克之, 即効! 成果が上がる 文章の技術

タイトルの "成果" が何なのか明確には書かれていないが、著者の主戦場と思われるネット記事でアクセス数を稼ぐことらしい。必然、正確な文章の書き方ではなく、バズる文章の書き方が中心となっている。しかし、文章によっては、謙虚さが必要とされる場合もあります。研究発表や学会発表などは、先行研究の識者に対して謝辞を述べ、自分の発表についても断定はせず「これはある条件下で導き出された結果にすぎません」と謙遜するのが流儀です。日本人は遠まわしな言い方を好む場合があり、強すぎる断定は「生意気...
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リンダ・グラットン(著), アンドリュー・スコット(著), 池村千秋(訳), LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略

人生100年の長寿化時代の生き方を考える本。従来の3ステージ (教育、仕事、引退) 型の人生が.長寿化で不可能になると説く。3ステージ型で100年を生きる金銭を手にするには仕事のステージを伸ばすしかないが、それは過酷で退屈だ。多くの人は複数の移行を伴うマルチステージの人生に対応しなければならない。マルチステージ化のために、従来は軽視されていた無形資産を意識して構築していく必要がある。代表的な無形資産は、生産性資産 (スキル、知識、人脈などの所得を増やすための要素) 、活力資産...
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矢部潤子, 本を売る技術

インタビュー本で精神論寄りの仕事論が多め。"本を売る技術" も語られるが、数字がまったく出てこないので本当に効果がある売り方なのかはわからずじまい。本が傷まないような気遣いの数々には感心させられる。
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小飼弾, 小飼弾のコードなエッセイ 我々は本当に世界を理解してコードしているのだろうか?

Software Design誌の連載に加筆修正したもの。エッセイ風の読み味ながら、本物のプログラマならではの含蓄がそこかしこに溢れている。プログラマはさせてはならないことをできなくしてなんぼAPIを設計するにあたって一番大事なのは、「API以外のアクセス手段を設けてはならない」ということAlan Kayの台詞 "People who are really serious about software should make their own hardware"現代における...
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高橋名人, 高橋名人のゲーム35年史

高橋名人の自伝とゲーム史。名人は1959年生まれで社会人になりたての頃にマイコンが出始めた世代のため、ちょうど自伝とゲーム史が重なっている。やはり面白いのは名人の裏話の数々。特に人気絶頂期のキャラバンはかなりギリギリの中で実現していたことがよく分かる。また、PCエンジンの誕生とともに「ファミコンの高橋名人」が一旦姿を消し、「ハドソンの高橋名人」としての活動が増えていく様子も、高橋名人のビジネスマン姿が垣間見えて興味深い。
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小島拓(著), 弁護士法人畑中鐵丸法律事務所(法律監修), 融資地獄 「かぼちゃの馬車事件」に学ぶ不動産投資ローンの罠と救済策

かぼちゃの馬車事件を題材として、サラリーマン大家の実態や融資地獄に陥った場合の対処法などを解説している。根底にあるのは、本来は先祖代々の地主や資産家が行ってきた不動産投資に、知識も資産も銀行との取引実績もないサラリーマンが参入するという歪み。これには、日本銀行の方針による金融緩和を受けて生まれたサラリーマン大家向けの融資が大きく関係している。こうして、多くのサラリーマン大家が採算の取れない物件を掴まされ、融資地獄に陥っている。後半の融資地獄に陥った場合の対処法も良い。「借りた...