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今尾恵介, 番地の謎

日本の住所の雑学本。日本の住所は番地と住居表示の二重構造になっているが、そのうち番地の方はとにかくわかりにくく、目的地を探す助けにならない。このわかりにくさは地番の成り立ちに起因している。そもそも地番は明治の地租改正の際に課税や不動産登記のために振られた符号であり、地図上で整然としていることを身上としている。これを住所を表すために流用したのだから、道を歩いて移動する人間を想定しておらず、わかりにくくなるのも無理のないことである。本書はこうした番地の成り立ちや、それにより生じた...
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橘玲, テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想

技術の裏付けを得て先鋭化するリバタリアンの物語。テクノ・リバタリアンの思想そのものに加え、それを推し進めるイーロン・マスク、ピーター・ティール、サム・アルトマン、ヴィタリック・ブリテンといった人物を生い立ちから追っているのも興味深い。彼らがたどり着いたユニヴァーサル・ベーシックインカム (USI) や共同所有自己申告税 (COST) といった政策案も押さえられてており最新の事情も掴める。
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真崎庸, ご飯の炊き方を変えると人生が変わる

著者は新井薬師前の日本料理店 "柾" の店主。タイトル通りご飯の炊き方の本だが、さすがにそれだけでは分量は少なめで、後半の出汁やおかずの話を除くと小冊子に収まる程度。数多の料理本と異なり、属人性を極力廃して再現性を上げるための工夫がなされているのが工学的で良い。火力は強火と蛍火のみで、微妙なさじ加減となる中火や中強火は使わない。人間が判断しなければならないのは沸騰したか、泡立ちがおさまったかだけで、あとは時間で管理する。余計な工夫をせずに本書に従えば誰でも安定したご飯が炊ける...
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ジェフリー・ケイン(著), 濱野大道(訳), AI監獄ウイグル

様々なディジタル技術を駆使した監視により監獄となったウイグルの告発本。日本語版の表題にAIと入っているのはマーケティング上の理由かと思われる。AIは監視を実現する要素技術の一つに過ぎず、、実際には保甲制度を始めとするアナログな末端の監視制度が担っている役割が大きい。原著のThe perfect police stateのほうが内容をよく表している。衝撃的な内容だが、彼の国のことなのでさもありなんと言ったところ。原著はすでに3年前の出版なので、現在ではさらに自体が悪化しているの...
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クリフォード・A・ピックオーバー(著), 川村秀憲(監訳), 佐藤聡(訳), 人工知能 グラフィックヒストリー

広義の人工知能の歴史を俯瞰できる本。原著が2019年の発行のため、LLMは触れられていないが、ディープラーニング (1965年) は取り上げられている。見開き1トピックの構成で、グラフィックヒストリーの名の通り歴史的な画像やイラストが添えられている。画像も含めて出典が一覧になっているのも嬉しい。
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スーツケースのキャスタ交換

実家から譲り受けた古いスーツケースのキャスタが破損したので交換した。専門業者に出すのも一つの手だが、古いスーツケースにそこまでコストをかけたくないので、自力で交換した。多くのスーツケースはユーザがキャスタを交換することを想定しておらず、手元のスーツケースも例外ではない。車軸が嵌殺しになっているので、まずはそこを金鋸で切断する必要がある。おそらくこれがキャスタ交換で一番大変で時間がかかる作業だろう。隙間に金鋸を差し込み、少しずつ削っていく。特にコツなどもなく黙々と作業するより他...
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ThousanDIY, 「100円ショップ」のガジェットを分解してみる! 安さに隠された秘密を解明!

主にPC関連のガジェットを分解する企画本。分解して終わりではなく、きちんと回路図まで起こしているのが素晴らしい。価格が価格だけにもちろん割り切った仕様はあるのだが、今どきは100円ショップガジェットでも安全性を確保した真っ当な作りになっているのがよく分かる。
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石川伸一, 料理と科学のおいしい出会い 分子調理が食の常識を変える

新しい料理を生み出す分子調理の啓蒙本。分子調理は化学だけではなく、物理学、生物学、工学、心理学など様々な科学分野を総動員した学際領域と言えるが、その概要を一冊で掴むことができる。凍結含浸法や高圧処理などの最新の調理技術への目配りも怠りない。
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Hayato Ito, 普通の人が資産運用で99点をとる方法とその考え方

同名のサイトに加筆して書籍化したもの。資産運用自体の考え方自体はまともなので、普通の人に勧めるには良い本だろう。ただし、税に関する記述に粗があるのは注意。いざとなればいつでも逃げられるNISAはまだしも、iDeCoのように長期間資産を拘束されるにもかかわらずコロコロ変わる仕組み (実際に退職所得控除の改悪が迫っている。特別法人税もいつ復活してもおかしくない) に対し、そのあたりの説明なしに無条件で最優先に投資するように勧めるのはあまりに楽観的すぎると思う。
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安藤清, 土屋守正, 松井泰子, 例題で学ぶグラフ理論

とあるYouTubeçチャンネルでも教科書として使われていた入門書。集合論などの離散数学の基礎はそこそこに、グラフ理論に特化した内容。主要なアルゴリズムがきちんとカバーされており、演習問題も豊富なので、プログラミングをしながら独習するのにおすすめできる。