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マイケル・ルイス(著), 渡会圭子(訳), 東江一紀(訳), 阿部重夫(解説), フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち

しばらく野球に浮気していたマイケル・ルイスが金融に戻ってきた。今度のテーマはナノ秒の世界で先回りして注文をかすめ取る超高速取引。忽然と消えてしまう注文の謎を追うブラッド・カツヤマや関連する技術者の視点からのストーリーは良質のミステリのよう。理解には欠かせないダークプールの仕組みの解説もしっかりしており、この分野の入門書としてもおすすめできる。
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マーク・ミーオドヴニク(著), 松井信彦(訳), 人類を変えた素晴らしき10の材料 その内なる宇宙を探険する

材料科学者による科学エッセイ。すぐ身の回りにある様々な材料をテーマに、その性質から歴史まで豊富なエピソードを披露してくれる。取り上げられる材料は幅広く、鋼鉄、紙、コンクリート、プラスチック、ガラスといった一見して文明を支えているのが分かるものから、チョコレート、泡、グラファイトなどちょっと毛色の変わったものまで登場して飽きさせない。
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谷岡一郎, 科学研究とデータのからくり

最近はニュースで取り上げられることも多い科学研究の不正がテーマ。著者は本職が社会科学者のため、自然科学のトピックはどうしても端切れが悪くなってしまう。いくら話題になったとはいえ、無理にSTAP細胞の話題を取り上げずとも、本業の社会科学の不正に絞った方が良かったように思う。とはいえ、不正が起きる構造の本質的な部分は学術分野によりさほど差があるわけではない。著者の主張する "研究者による過失・不正のレベル" は、これまた異分野である工学の研究者である私にも十分に納得できるものであ...
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中西敦士, 10分後にうんこが出ます: 排泄予知デバイス開発物語

排泄予測デバイスDFreeの開発とトリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社の設立までを綴った自伝的ドキュメンタリ。著者自身は技術者ではないため、アイディア出しの後は人集めや資金集めが中心。無休のボランティアで技術者に手伝わせる行動力はさすがだと感じるし、こういうタイプの人がスタートアップの立ち上げに向いているのだと思う。
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松原隆一郎, 堀部安嗣, 書庫を建てる 1万冊の本を収める狭小住宅プロジェクト

巻頭の美しい写真に、本書の価値のほぼすべてが詰まっている。本好きならば一度は夢想する書庫を本当に体現してしまったのは、ただただ羨ましい。それでも狭小住宅であるがために、庶民にももしかしたらという夢を抱かせてくれる。なお、目の前の蔵書を整理する助けにはまったくならないので、その方面のヒントを探している方はご注意を。
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Joe Kutner(著), Sky株式会社 玉川竜司(訳), ヘルシープログラマ プログラミングを楽しく続けるための健康Hack

O'Reillyの健康Hack本。雑多なtipsの詰め合わせではあるが、PCの前にに座りっぱなしの人々がチェックするべき事項は一通りカバーされている印象。日本語版で追加された末尾の "散歩とイングレス" はやや蛇足か。
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ケビン・ミトニック(著), ウィリアム・サイモン(著), 岩谷宏(訳), 欺術 (ぎじゅつ) 史上最強のハッカーが明かす禁断の技法

ケビン・ミトニックの実体験に基づいた豊富な事例が実に興味深い。自身が同じ手口に出会ったときに、正しい対処を取れる自信がない。巻末の防御手法自体はやや退屈で、時代遅れの部分も含まれているので読み飛ばしても良いかもしれない。翻訳は岩谷宏だが、比較的無難な仕上がり。
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清水亮, 後藤大喜, プログラミングバカ一代

著者の清水亮は、shi3zと言ったほうが通りが良いかもしれない。自伝的作品で多少は盛っているものと思うが、それを差し引いても面白い。文章はやや荒削りではあるがテンポ良く、何よりも本人の人生が面白いのでぐいぐいと惹き込まれる。プログラマが読むべきともこれから働く学生が読むべきとも言い難いが、読み物として読むべき一冊。
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田村圭介, 上原大介, 新宿駅はなぜ1日364万人をさばけるのか

建築論を専門とする田村と新宿ダンジョンの作者である上原の組み合わせの妙。改めて新宿駅の構造を俯瞰すると、人が新宿駅で迷子になる理由が見えてくる。表題が釣りなのだけが残念。
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日経デザイン(編), パッケージデザインの教科書

表題通りパッケージデザインに特化した内容で、かなり工業デザイン寄り。飲料容器などの重点分野は製造工程の基礎から学べるように工夫されている。色の印象など主観的な部分は統計調査による裏付けを加えているのも良い。