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ヴィトルト・リプチンスキ(著), 春日井晶子(訳), ねじとねじ回し この千年で最高の発明をめぐる物語

"この1,000年で発明された最高の道具" をテーマに調査を進めるうちに、次々とねじの歴史の深みに嵌っていく様子は上質の推理小説の趣。強いて欠点を挙げると、工具の歴史に詳しくない人間には少々図版が不足しているように思える。門外漢には文字だけでは想像がつかない部分がある。
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小林章, 欧文書体 その背景と使い方

欧文書体の解説書は数あれど、書体の成り立ちの根幹である平筆によるカリグラフィから本気で解説してくれるものは珍しい。書体デザインはもちろんのこと、欧文組版の不思議なルールの数々もその根幹を辿ると極めて合理的に発展してきたことがよく分かる。おすすめ。
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斎藤駿, なぜ通販で買うのですか

ルームランナーや通販生活を世に送り出してきた著者による通販論。当事者目線でカタログ通販の発展の歴史を追った本は貴重。ややロジックの後付け感があったり、小売の視点に偏りすぎているきらいはあるが、当事者の語りというのはそんな欠点を補って余りある迫力がある。文体の妙な軽さと過去の失敗を反省しているようでしていない様子は好き嫌いが分かれるところだろうか。
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深田洋介(編), ファミコンの思い出

思い出のファミコンの投稿内容を書籍化したもの。ゲームの内容というよりも周辺エピソードが中心。当時は子供も大人もゲームとの付き合い方が良くわからなかったことがうかがえる。ファミコン最初期の直撃を食らった世代ならば共感できる内容が多いはず。
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野口悠紀雄, 経済危機のルーツ モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか

1970年代以降の世界経済史。まさにその時代を生きてきた著者の生の感覚や体験談が興味深い。歴史の延長として見た未来に向け日本がなすべきこととして、衰退産業への支援の中止、資本や人的資源のグローバリゼーション、専門教育への投資が挙げられている。いずれも目新しい提言ではないが、歴史を振り返ればそれらがまさに正論であることがよく分かる。
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岩堀修明, 図解・感覚器の進化 原始動物からヒトへ水中から陸上へ

久しぶりのブルーバックスは感覚器に着目した進化論。生物が海中から陸上へと移動する際に感覚器がどのように適応していったか、また地上から海中へと戻っていったクジラがどのように再適応を果たしたのかを豊富な図版で解説してくれる。こうして歴史を見てみると、行き当たりばったりを繰り返す進化にも関わらず、見事な適応を果たしているのには神秘を感じずにはいられない。
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芝崎みゆき, 古代マヤ・アステカ不可思議大全

意外に馴染みのない古代マヤ・アステカ文明の絵解き本。イラストだけでなく本文も全て手書きの労作。専門の研究者の本にはないミーハーな視点が実に良い。神話の世界の登場人物をハリウッドスターと同じ感覚で語るのはこの本くらい。それでいて内容の充実っぷりは異常なほどで、再読にも十分に耐える品質。おすすめ。
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中村敏雄, スポーツルールの社会学

中村敏雄によるスポーツ論考集。専門としているスポーツルールを表題として掲げているが、内容は近代スポーツにおける人工化やそれに伴う場外も含めた平等を中心に論じている。近代スポーツの創出そのものを人工化の過程とみなし、その行き過ぎを危惧する提言は、まさに現在の状況を言い当てている。おすすめ。
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丸山学, 先祖を千年、遡る 名字・戸籍・墓・家紋でわかるあなたのルーツ

静かなブームとなっている家系図作成の入門書。新書ということもあってほんのさわりだけだが、読み物としてはなかなか面白い。各種史料や現地状況の調べ方など、調査を疑似体験しているような気分になってくる。現代の戸籍調査の具体的な方法などがもう少し細かく補足されているとなお親切だったか。
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西尾泰和, コーディングを支える技術 成り立ちから学ぶプログラミング作法

現代のプログラミング言語で使われている各種の技術がどのように生まれてきたのかを歴史的な経緯から追っていく。最新の言語仕様だけを見ているとなぜこのような形となっているかわかりにくい機能も、どういった問題点に対する解決策として生まれてきたかを含めてみると腹落ちする。年配のプログラマからすると常識的と思われる様なことも多いが、それだけにわざわざ一冊の書籍としてまとめられているのは貴重。最新の言語からプログラミングの世界に入った人にはぜひ読んでもらいたい一冊。おすすめ。