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野口悠紀雄, 経済危機のルーツ モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか

1970年代以降の世界経済史。まさにその時代を生きてきた著者の生の感覚や体験談が興味深い。歴史の延長として見た未来に向け日本がなすべきこととして、衰退産業への支援の中止、資本や人的資源のグローバリゼーション、専門教育への投資が挙げられている。いずれも目新しい提言ではないが、歴史を振り返ればそれらがまさに正論であることがよく分かる。
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岩堀修明, 図解・感覚器の進化 原始動物からヒトへ水中から陸上へ

久しぶりのブルーバックスは感覚器に着目した進化論。生物が海中から陸上へと移動する際に感覚器がどのように適応していったか、また地上から海中へと戻っていったクジラがどのように再適応を果たしたのかを豊富な図版で解説してくれる。こうして歴史を見てみると、行き当たりばったりを繰り返す進化にも関わらず、見事な適応を果たしているのには神秘を感じずにはいられない。
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芝崎みゆき, 古代マヤ・アステカ不可思議大全

意外に馴染みのない古代マヤ・アステカ文明の絵解き本。イラストだけでなく本文も全て手書きの労作。専門の研究者の本にはないミーハーな視点が実に良い。神話の世界の登場人物をハリウッドスターと同じ感覚で語るのはこの本くらい。それでいて内容の充実っぷりは異常なほどで、再読にも十分に耐える品質。おすすめ。
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中村敏雄, スポーツルールの社会学

中村敏雄によるスポーツ論考集。専門としているスポーツルールを表題として掲げているが、内容は近代スポーツにおける人工化やそれに伴う場外も含めた平等を中心に論じている。近代スポーツの創出そのものを人工化の過程とみなし、その行き過ぎを危惧する提言は、まさに現在の状況を言い当てている。おすすめ。
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丸山学, 先祖を千年、遡る 名字・戸籍・墓・家紋でわかるあなたのルーツ

静かなブームとなっている家系図作成の入門書。新書ということもあってほんのさわりだけだが、読み物としてはなかなか面白い。各種史料や現地状況の調べ方など、調査を疑似体験しているような気分になってくる。現代の戸籍調査の具体的な方法などがもう少し細かく補足されているとなお親切だったか。
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西尾泰和, コーディングを支える技術 成り立ちから学ぶプログラミング作法

現代のプログラミング言語で使われている各種の技術がどのように生まれてきたのかを歴史的な経緯から追っていく。最新の言語仕様だけを見ているとなぜこのような形となっているかわかりにくい機能も、どういった問題点に対する解決策として生まれてきたかを含めてみると腹落ちする。年配のプログラマからすると常識的と思われる様なことも多いが、それだけにわざわざ一冊の書籍としてまとめられているのは貴重。最新の言語からプログラミングの世界に入った人にはぜひ読んでもらいたい一冊。おすすめ。
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山本皓一, 日本人が行けない「日本領土」 北方領土・竹島・尖閣諸島・南鳥島・沖ノ鳥島上陸記

日本の離島を扱っているが、興味本位での上陸ではなく領土問題に関する政治的なメッセージを強く含む本。2007年の著作だが、今の情勢から見てもあまり古くなっていない。第1次安倍内閣時代の安倍総理を含む、領土問題に関連の深い政治家との対談を多数含んでいるのも特徴。
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明石散人, 謎ジパング

日本史ミステリ謎解き本。ネタは邪馬台国から桃太郎まで幅広いが、"失われた大四元" として麻雀も取り上げられている。馬吊から看虎、三章、扯五章を経て紙牌に至る麻雀成立の定説から見ると与太話に過ぎないが (巻末の参考文献を見ても、著者が麻雀の歴史を本格的に調べたとは考えにくい) 、読み物としては面白い。
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津野海太郎, 電子本をバカにするなかれ 書物史の第三の革命

電子書籍をテーマに扱った本だが、電子書籍を礼賛するでもなく難癖を付けて批判するでもなく、広い意味での書物史の中での位置付けを探ろうとする姿勢が素晴らしい。"季刊・本とコンピュータ" 誌を中心に掲載された記事を掻き集めていることもあり、後半は電子書籍から外れた話が多いのがやや残念か。
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増田弘(監修), なぜ世界で紛争が無くならないのか

日本でもニュースでよく取り上げられるものの、その背景がよくわからない世界の7つの紛争、"アラブ対イスラエル"、"アメリカ対イラク紛争"、"朝鮮半島危機"、"台湾海峡危機"、"日中危機"、"アフリカの紛争"、"東ティモール紛争" を取り上げて解説する。各章はそれぞれ個別の専門家が解説する形式。各章が完全に独立しており寄せ集め感は免れず、また紙幅の制限からやや踏み込みが浅いが、一冊の新書でこれだけ幅広くまとめられているのはありがたい。