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吉本佳生, 金融工学の悪魔 騙されないためのデリバティブとポートフォリオの理論・入門

かなり噛み砕いたデリバティブの入門書。デリバティブを構成する先物取引、スワップ取引、オプション取引が一通り理解できる。細かな数式は用いず、大まかな確率分布 (例えば円相場予想の説明では5円刻み) のみで説明するので、数学が苦手な向きでも大筋は理解できるだろう。確率分布をきちんとした対数正規分布に置き換えたところで大勢に影響はない。FX普及前の書籍のためそのあたりには言及していないが、外貨預金や住宅ローンといった身近な活用例も触れられている。
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齋藤繁, 院長が教える 一生登れる体をつくる食事術

登山に特化した部分は少なめで、一般的な栄養学がほとんど。後半のレシピ集は水増し感がある。
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白井恭弘, 外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か

第二言語習得 (Second Language Acquisition) 研究の啓蒙書。第一言語 (母語) 習得はほとんどの人が成功するのに対し、第二言語習得の結果は人によって様々なのはなぜなのか、という疑問に対する研究を複数の観点から紹介してくれる。第二言語習得の成否が単純な知能・知性 (いわゆるIQ) で決まるかというとそう単純なものではなく、知能・知性とは独立した外国語習得特有の適正というものが存在するようだ。また、言語能力というものも、日常言語能力と認知学習言語能力に...
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クリフォード・A・ピックオーバー(著), 川村秀憲(監訳), 佐藤聡(訳), 人工知能 グラフィックヒストリー

広義の人工知能の歴史を俯瞰できる本。原著が2019年の発行のため、LLMは触れられていないが、ディープラーニング (1965年) は取り上げられている。見開き1トピックの構成で、グラフィックヒストリーの名の通り歴史的な画像やイラストが添えられている。画像も含めて出典が一覧になっているのも嬉しい。
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広尾晃, データ・ボール アナリストは野球をどう変えたのか

二部構成となっており、前半はプロ野球 (NPB) におけるデータ野球の最新情報を、後半は日米の野球記録の歴史をそれぞれ扱っている。現代ではセイバーメトリクスやデータ野球を扱う本は多々あるが米国の最新情報を扱ったものが多く、本書のようにNPBにおける導入状況を扱った本は珍しい。各チームのアナリストの採用状況から、トラックマンを始めとする測定機器の導入状況、果ては日本野球学会の動向まで、まさに作者の地道な取材が結実したもの。数字のスポーツとして楽しめる野球の土台を形作る野球記録の...
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筧裕介(著), 認知症未来共創ハブ(監修), 樋口直美(監修), 鬼頭史樹(監修), 堀田聰子(監修), 認知症世界の歩き方

旅行ガイド仕立ての認知症入門書。"お風呂を嫌がる"、"バスや電車から降りられなくなる" といった認知症の典型的な現象を、その背後にある理由から解説してくれる。こうした日常的な行動も分解してみると様々な能力を必要とするもので、それらの一つでも障害が生じてしまうと途端に支障が出るのがよく分かる。
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長沼伸一郎, 現代経済学の直観的方法

現代経済学と銘打っているが中身はほぼマクロ経済学で、ミクロ経済学はほぼ触れられない。それでも、古典派経済学とケインズ経済学の基礎を大づかみするという目的だけに絞れば良書といえる。それぞれの経済学の生まれた時代背景も添えられているのもわかりやすい。最後の第9章のみは既存経済学の解説から離れて自説を展開しており、他の部分とだいぶ毛色が異なるので注意が必要。著者の専門である物理学の縮退や囲碁の概念を用いて経済を説明しようという試みは面白いが、別の著作で展開するべきだったと思う。
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小林銅蟲, やせましょう 40歳漫画家が半年で15kg本気(マジ)ダイエットした記録

で大増量となった小林銅蟲がダイエットに挑む企画マンガ。本人登場のエッセイマンガの体裁なので、めしにしましょうよりはやや常識寄り。それでも、科学信仰がありながらも極端に走る著者のおかげで、それぞれのダイエット法の限界を知ることができる。
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石川伸一, 料理と科学のおいしい出会い 分子調理が食の常識を変える

新しい料理を生み出す分子調理の啓蒙本。分子調理は化学だけではなく、物理学、生物学、工学、心理学など様々な科学分野を総動員した学際領域と言えるが、その概要を一冊で掴むことができる。凍結含浸法や高圧処理などの最新の調理技術への目配りも怠りない。
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安藤清, 土屋守正, 松井泰子, 例題で学ぶグラフ理論

とあるYouTubeçチャンネルでも教科書として使われていた入門書。集合論などの離散数学の基礎はそこそこに、グラフ理論に特化した内容。主要なアルゴリズムがきちんとカバーされており、演習問題も豊富なので、プログラミングをしながら独習するのにおすすめできる。