book 川端裕人, 三島和夫, 8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識 作家の川端裕人が睡眠の専門家・三島和夫 (国立精神・神経医療研究センター) に最新の睡眠研究の事情を伺うスタイル。少々前の研究で有名になりひとり歩きしていた体内時計25時間周期説、8時間睡眠が理想とする俗説など、睡眠に関わる従来の通説を次々と斬っていくのは痛快。 2015-01-28 book
book ウイリアム・ブロード(著), ニコラス・ウェイド(著), 牧野賢治(訳), 背信の科学者たち 論文捏造はなぜ繰り返されるのか? STAP細胞の騒動を受けて緊急出版されたという触れ込みだが、話題に合わせて急遽でっち上げた様ないい加減な本ではない。原本は1982年の出版で、過去に邦訳も出ていた本を新装したもの。捏造問題は決して科学者個人の資質によるものではなく、構造的に不可避な問題であることがよく分かる。出世主義、盲信、師弟関係の圧力などの多くの要因から逃れるのは決して容易なことではない。事実、歴史的な科学者達の論文にも捏造の跡が多数発見されているのだ。 2015-01-18 book
book ナシーム・ニコラス・タレブ(著), 望月衛(訳), まぐれ 投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか タレブの代表作の一つ。リスクの数学的な話よりはもう少しメタな話。皮肉に満ちた語り口は好みが分かれるところだと思うが、世間で生存バイアスが軽視されすぎているという主張自体は納得できる。 2015-01-13 book
book 山内志朗, ぎりぎり合格への論文マニュアル 普段読む論文の書き方マニュアルは理工系のものが多いが、これは人文学系の教授によるもの。とはいえ、論文の書き方の本質である主題や題材の定め方などは分野により異なるものでもないので、十分に参考になる。自ら偏執者を名乗る通り、細かな記号の使い方や体裁の整え方の記述も豊富。ただし、こちらは理工系の論文誌の作法とは少々異なる点もあるので、参照の際はご注意を。 2015-01-06 book
book ネマタ(著), 福地誠(編), もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編 勝つための現代麻雀技術論の続編。今回は基礎理論というよりも何切るが主体で読みやすい。解説も概ね納得できる内容。 2015-01-05 book
book メアリアン・ウルフ(著), 小松淳子(訳), プルーストとイカ 読書は脳をどのように変えるのか? 言語学と脳科学の見事な融合。書を読むということが脳にどの様な影響を与えるのかという大きな問題への解を見事に示してくれる。普段何気なく行っている読書という行為が、非常に複雑なプロセスの集合体であることに気付かせてくれる。つい読書を会得した子どもの頃に思いを馳せてしまった。 2015-01-01 book
book 広尾晃, プロ野球なんでもランキング 「記録」と「数字」で野球を読み解く 野球の記録で話したいの広尾晃によるセイバーメトリクス本。この本ならではの新しい指標は特になし。TBA (True Batting Average) などの補正により、異なる時代の記録を比較しようという試みが中心。後半の選手の体格などのプロフィール情報の分析は新味があるが、掘り下げがやや浅いか。 2014-12-31 book
book ジョン・ブロックマン(著), 高橋健次(訳), 2000年間で最大の発明は何か 2000年のNHKの正月特番で取り上げられて話題になった本を今更ながら。回答者は各界の専門家達。本書中でジョン・C・ドゥボラックが指摘している通り、各自の専門分野に引っ張られた回答が多いように感じる。また、これも本書中でヘンドリック・ハーツバーグが指摘していることだが、2000年間というよりは過去数百年の最近のものに偏っているようにも感じる。これらをきちんと統制できていなかったことはやや残念だが、その欠点を差し引いても読み物としては十分に楽しめる。 2014-12-23 book
book ブライアン・カプラン(著), 奥井克美(監訳), 長峯純一(監訳), 選挙の経済学 選挙そのものを経済学で読み解こうというよりは、投票者の持っているバイアスの話題が主。原題の "The Myth of the Rational Voter" の方が内容を的確に表している。政治に関する知識の有無がバイアスを生むという主張は実に説得力がある。米国の経済意識調査 (SAEE)を中心としたエビデンスも十分。後半の合理的無知や原理主義者間の対立に関する議論はやや観念的であり、科学的な調査結果を求める向きにはやや退屈かもしれない。 2014-12-20 book
book Dr. フィリップ・マフェトン(著), 中塚祐文(監修・訳), 『マフェトン理論』で強くなる! 革命的エアロビックトレーニング 心拍数を強く意識したエアロビックトレーニング (非アネロビックトレーニング) の解説書。一般の市民ランナーにも取り込める内容が多い。心拍数による負荷の調整、給水の重要性、食生活の改善を主に扱っているが、エビデンスは少なめ。マーク・アレンや藤原裕司といった少数のアスリートの成功例に大きく頼っている印象。食生活の点では低炭水化物も (もちろん個人の適正を見ながらという前提ながら) 薦められているが、最近の研究を見ると中長期のリスクを考慮して取り入れるべきと思う。 2014-12-07 book