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青木昌彦(編著), 安藤晴彦(編著), モジュール化 新しい産業アーキテクチャの本質

"モジュール化" という単語は聞いたことがあるというレベルで読み始め、その理解の浅さに気付かされた。モジュール化とは、字面から想像される単に機能ブロックごとに切り分けるだけのものではなく、摺り合わせのコストを下げるとともに競争圧力を高めるものであることがよく分かる。机上の論理だけではなく、自動車産業や半導体露光装置産業、ゲーム産業など様々な産業の実例も豊富に含まれており、この一冊だけでモジュール化の分野を概観できる。おすすめ。
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ASIOS, アンドリュー・ウォールナー, 検証 大震災の予言・陰謀論 “震災文化人たち” の情報は正しいか

3.11後に生まれた様々なトンデモ論にひとつひとつツッコミを入れていくスタイル。誤りに赤を入れていく形式のため、震災や原子力を体系立てて学ぶのには向かず、あくまでも娯楽として楽しむ本。ややマイナーな人工地震説や予言にページを割きすぎている感はあるものの、主要なトンデモ論は概ねカバーされている様に見える。
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菊池聡, 超常現象をなぜ信じるのか 思い込みを生む「体験」のあやうさ

超常現象懐疑本としては古典とも言える一冊。主に認知心理学の視点から、どの様にして誤認が起きるのかを解説。既にこの分野に興味のある人には既知のネタも多いものと思われるが、コンパクトに良くまとまっている。慎重に言葉を選び超常現象を頭ごなしに否定しない様に気配りをしているのも好印象。
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トーマス・H・ダベンポート(著), ジェーン・G・ハリス(著), ロバート・モリソン(著), 村井章子(訳), 分析力を駆使する企業 発展の五段階

膨大なデータの分析や活用をテーマとしているが、"ビッグデータ" の様なbuzzwordに踊らされることなくきちんと地に足がついている。本書で一貫して主張されるのは分析力を高め活用するには企業を挙げての取り組みが必要であるという点。成功に必要な要素として挙げられるDELTA (Data, Enterprise, Leadership, Target, Analyst) の実現に向けたステージごとの進め方も非常に参考になる。データ分析に携わる人はもちろん、意思決定にデータを活用し...
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木下是雄, 理科系の作文技術

文章術の古典とも言える本。学生時代に一度読んでいるが、思うところがあり再読。学生時代と異なり、それなりの量の作文をこなしてきた今に読み返すと沁み入る部分が多い。ワードプロセッサの普及前の著作であり、手書きを前提としている箇所などやや時代を感じる箇所もあるが、その他の部分は全く古くなっていない。現代でも版を重ねているのにはやはり理由がある。理工系の人間は必読。
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中田信哉, ロジスティクス入門

単なる物流を越えた、マネジメントとしてのロジスティクスの入門書。事例を並べただけの本とは異なり、理論的な背景もしっかりと説明されているのが好印象。米国で "ロジスティクス" という言葉が生まれるまでの歴史や、物流管理とロジスティクスの違いなど、基礎から理解させてくれる。
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近藤武史, 榎木英介, わたしの病気は何ですか? 病理診断科への招待

あまり聞きなれない "病理診断" の実態を語った本。著者はどちらも現役の病理医。豊富な図版と実例で、実際の病理診断の流れがよく分かる。
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満員電車がなくなる日 鉄道イノベーションが日本を救う

満員電車の歴史と、満員電車をなくすための方策の提言。提案されている運行方法のイノベーションは素人目にはリスクが高まりそうに見える箇所がある。例えば、コストダウンのために無線LANをこの種の基幹で利用するなど、通信屋としては非常に怖い。一方で、戦略的プライシング等の運賃のイノベーションは非常に興味深い。社会的批判さえ乗り越えられれば十分に実現性があるものと思われる。
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石井彰, エネルギー論争の盲点 天然ガスと分散化が日本を救う

出版時期からすると3.11直後に慌てて出版されたようにも見えるが、内容は意外と本格派。電力のみではなくもう少し広い視点でエネルギー全体の最適化を考えている点が特徴的。著者の経歴からしてやや天然ガスに肩入れし過ぎているきらいはあるが、概ね説得力のある内容。
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櫻井武, 食欲の科学

ブルーバックスらしい硬派な "食欲" の解説本。脳生理学の歴史の中でどのような実験を通じてレプチンや各種の神経ペプチドの発見に至ったかがストーリー仕立てになっており、実にわかりやすい。なお、本書はあくまでも科学本なので、直接ダイエットの役に立つような知識はほとんどない。