book 米国科学アカデミー(編), 池内了(訳), 科学者をめざす君たちへ 研究者の責任ある行動とは 研究者は必ず読むべき本。タイトルは科学者となっているが、本書で述べられている研究倫理は、工学やその他の分野の研究者であっても厳守するべきもの。少し前の本なので実験参加者へのインフォームド・コンセントや個人情報の保護に関する記述はほとんど見られないが、その他の不正なデータ操作、利害関係の衝突、研究資料の帰属、業績評価、剽窃など、研究者が知っておくべき事項は一通り網羅されている。 2020-02-14 book
book 永井孝尚, なんで、その価格で売れちゃうの? 行動経済学でわかる「値づけの科学」 流行りの行動経済学で値付けを読み解こうという本。紹介されている値付けの技術は、行動経済学を持ち出すまでもない古典的なものも多い。それでもPSM分析などの値付けのための基本的なツールは一通り押さえられており、入門書としては良い出来。 2019-11-14 book
book ロバート・H・フランク(著), 金森重樹(監訳), 幸せとお金の経済学 幸福学の啓蒙書。特に、ロバート・フランクの提唱した「地位財」と「非地位財」の違いを重視している。「地位財」は周囲との比較により満足を得るもので、所得や社会的地位、車・家・時計といった物的財が代表的。一方「非地位財」は他人が持っているか否かに関係なくそれ自体に価値を見いだせるもので、健康、安全、自由、愛情などが挙げられる。「非地位財」は希少で、その価値を見極めにくいが、これを選んで投資することで、幸福度を高められる。これだけを見ると精神論か「地位財」を獲得できない人間の負け惜し... 2019-08-26 book
book 橘玲, もっと言ってはいけない 言ってはいけないの続編。取り上げている話題には曲がりなりにもエビデンスが用意されているが、やや理論が飛躍していたり、アクア説などまだ異論も多い学説に入れ込んでいたりと、首をかしげるところも多い。それでも読み物としては申し分なし。 2019-08-21 book
book 丸山宗利, 昆虫はすごい 現役の昆虫学者による昆虫コラム。特に高度に文化的な行動をとる昆虫を多数取り上げており、知的好奇心を刺激してくれる。収穫する、狩る、着飾る、旅をする、農業する、奴隷を使うなど、人間が行っている高度な行動の多くを昆虫が先に実践していたというのは驚き。 2019-07-04 book
book Testosterone, 筋トレが最強のソリューションである マッチョ社長が教える究極の悩み解決法 一見ネタ本だが、実はなかなかに考えられた良書。どんな悩みも筋トレで吹き飛ばせるという主張が繰り返される。自己啓発本は読んだあとに何をすれば良いかよくわからずそのままとなってしまうことがお多いが、本書はとにかく筋トレをやるべきと思わせてくれる。具体的な筋トレ方法がほとんど書かれていないのは他の本をあたれば良いが、効果はすべて科学的に証明されていますと主張している箇所はさすがに参考文献を挙げるべきかと思う。 2019-03-13 book
book 井出留美, 賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか 食品ロスが生まれる社会的な背景を中心に扱う。消費者のゼロリスク志向、食品メーカーの過剰な安全基準、日付後退品を拒否する流通など、さまざまな要因が絡み合って大量の食品ロスを生み出していることがよく分かる。 2019-02-14 book
book 橘玲, 「読まなくてもいい本」の読書案内 知の最前線を5日間で探検する 複雑系、進化論、ゲーム理論、脳科学、功利主義の進歩が "知のビッグバン" 起こした後の本を中心に読むべきという主張。特に進化論を高く評価しており、遺伝学、脳科学、進化心理学、行動ゲーム理論、行動経済学などが進化論を土台に融合しているとみなしている。専門の科学者ではないので論理の飛躍が多いが、言わんとしていることは理解できる。 2019-01-03 book
book マティアス・ビンズヴァンガー(著), 小山千早(訳), お金と幸福のおかしな関係 経済学者による幸福論。カーネマンらによる幸福研究はセックスなどの行動が幸福感を向上させることを明らかとしたが、ブランチフラワーやオズワルドの調査では収入とセックスの頻度には関係がないことがわかっている。人を幸福にする他の行動も、収入とともに増えるどころかむしろ減っている。ランク付けはさまざまな活動をステータス競争へ変え、内在的なモチベーションを殺し、その活動に関わる人々の幸福度を下げる。フィギュアスケート、学術研究などが代表例。トレッドミルは経済成長の源泉でもあるが、同時に幸... 2018-12-21 book
book クラウディア・ハモンド(著), 木尾糸己(訳), MIND OVER MONEY 193の心理研究でわかったお金に支配されない13の真実 行動経済学や心理学の研究成果をもとにお金と心の関係を探る。金銭的インセンティブの研究から、出来高制の報酬はある水準を超えるとうまく機能しなくなることがわかっている。人は報酬の対象とならない努力をしようとしなくなる。子供の教育に関する研究も面白い。単に良い成績にお金を出すのではなく具体的な課題の達成にお金を払うことが成績向上につながる。また、子供の成果を褒めるよりも、努力や取り組み方を褒める方が効果的。金銭感覚が似ている夫婦は幸福度が高い。離婚の先触れとなる最大の要因はお金に関... 2018-12-05 book