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トラヴィス・ソーチック(著), 桑田健(訳), ビッグデータ・ベースボール 20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを甦らせた数学の魔法

オークランド・アスレチックスのマネー・ボールの後に台頭してきたピッツバーグ・パイレーツのセイバーメトリクスを紹介するドキュメンタリ。今ではメジャーリーグの新たな常識となりつつあるPITCHf/xによる捕手のピッチフレーミングの分析、ビッグデータを活かした極端な守備シフト、先発4人制のローテーション、スタットキャストによる守備の数値化、投手の怪我を減らすよりスマートな球数制限などが生み出されるまでが明らかになる。
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谷岡一郎, 科学研究とデータのからくり

最近はニュースで取り上げられることも多い科学研究の不正がテーマ。著者は本職が社会科学者のため、自然科学のトピックはどうしても端切れが悪くなってしまう。いくら話題になったとはいえ、無理にSTAP細胞の話題を取り上げずとも、本業の社会科学の不正に絞った方が良かったように思う。とはいえ、不正が起きる構造の本質的な部分は学術分野によりさほど差があるわけではない。著者の主張する "研究者による過失・不正のレベル" は、これまた異分野である工学の研究者である私にも十分に納得できるものであ...
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ASIOS, 「新」怪奇現象41の真相

いつもの超常現象解明シリーズ。フォーマットも従来通りで、一般に信じられている伝説を述べた後で真相を検証するスタイル。シリーズを通じて質は高いと思うが、今回はネット上で少々盛り上がった程度の小ネタも多くいかんせん小粒な印象。
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苅谷剛彦, 知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ

表題ともなっている複眼思考とは、常識やステレオタイプにとらわれず、自分の頭で考える思考法を指している。思考法というとコンサルタントの掲げる思考法のフレームワークの類を思い浮かべる人も多いだろうが、本書はより根源的な問題の立て方やその展開法を扱っている点で一線を画している。若い学生を想定読者としているためか、批判的な読書法に始まり、論理の積み重ね方、問題の立て方、ものごとの多面性を捉えるための方法をひとつひとつ手ほどきしていく構成となっており、順を追って読み進めるだけで知的複眼...
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ジュディス・リッチ・ハリス(著), 石田理恵(訳), 子育ての大誤解〔新版〕 重要なのは親じゃない (上) (下)

入手に苦労していたあの名著がついに文庫化。内容は言わずもがな。とりあえず、保存用として確保した。
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大川慎太郎, 不屈の棋士

ブームのコンピュータ将棋本だが、コンピュータ将棋そのものではなく棋士へのインタビューを主題に据えた企画が秀逸。もちろん、コンピュータ将棋の事前知識なしでも楽しめる。羽生、渡辺、森内、佐藤らのトップ棋士がコンピュータ将棋をどう捉えているのか、先駆者たちはコンピュータ将棋をどう活用しているのか、コンピュータ将棋がトップ棋士を越えようとしている現在だからこそ様々な思いが交錯している様子が浮かび上がってくる。おすすめ。
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サンキュータツオ, ヘンな論文

いわゆる珍論文を眺めて楽しもうという本。取り上げられている論文は13本。性質上、科学系よりも社会学系のものが多いか。各論文のアカデミックな背景などをもう少し掘り下げるような敬意があっても良かったのではないかと思う。
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サイモン・シン(著), 青木薫(訳), 数学者たちの楽園: 「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち

サイモン・シンの著作はすべて読んでいるが、まさかここでザ・シンプソンズを取り上げてくるとは思いもしなかった。それでも読み進めてみると、決して変化球ではなく、サイモン・シンが本気で取り組むだけのテーマであることがよく分かる。ザ・シンプソンズに散りばめられた分かる人にだけ分かればよい数学ネタを解説するというある意味無粋な試みではあるのだが、その解説自体をエンターテイメントとして成立させている筆力はさすが。おすすめ。
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データスタジアム株式会社(データ提供・監修), 高校球児に伝えたい! プロだけが知っているデータで試合に勝つ法

データスタジアムお得意のデータ分析本。プロ野球のデータをそのまま高校野球に適用できるかというそもそもの疑問はあるが、そこさえ目をつむってプロ野球のセイバー本とみれば良書と言える。インフォグラフィックス風の図版も良い。
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ダニエル・カーネマン(著), 村井章子(訳), ファスト&スロー (上) (下)

示唆に富む内容が多く、付箋を付けながら読んでいたら付箋だらけになってしまった。上下巻の大著だが、豊富な例題に頷きながら気持ちよく読める。表題のFast and Slow (速い思考と遅い思考) が主題だが、著者をこの世界を代表する研究者に押し上げたプロスペクト理論の解説ももちろん含まれている。最近の脳ブームに興味のある人はもちろん、そうでなくとも骨太の科学本を読みたい向きには間違いなくおすすめできる。