sociology

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高田かや, カルト村で生まれました。

ヤマギシズム学園出身の女性の体験談。コミックエッセイ風の軽いタッチで描かれているが、内容はかなり壮絶。著者が (少なくとも作中では) 前向きであることは救いだが、適応できなかった二世のことを思うといたたまれなくなる。
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上村雅之, 細井浩一, 中村彰憲, ファミコンとその時代

本書は二部構成で、ビデオゲームの誕生からファミコンの開発までを上村雅之が綴った第一部と、ファミコンが産業や社会に与えた影響を考察した第二部から成っている。巻末には、上村雅之と細井浩一の対談も収録されている。やはり眼目は上村の第一部。ファミコンの開発や設計思想といった上村でなければ語れない内容は濃く、今後ビデオゲーム史を研究する人々にとって第一級史料となりうるだろう。ファミコンに至るまでのビデオゲームの歴史が上村の視点から示されているのも興味深い。
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帚木蓬生, やめられない ギャンブル地獄からの生還

ギャンブル依存症の治療を専門とする医師による著作。読み始めて早々、冒頭のギャンブル依存症の患者による手記6本に大きな衝撃を受ける。彼らの心理は決して共感できるものではないが、表題にもある "やめられない" 状態に陥るプロセスが痛いほどよく分かる。その後に続くギャンブル依存症の基礎知識や自助グループ (ギャンブラーズ・アノニマス) の解説も平易でありながら、病的ギャンブリングの恐ろしさがひしひしと伝わってくる。おすすめ。
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岩瀬昇, 石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか? エネルギー情報学入門

三井物産で原油取引や石油開発に携わっていた著者による、石油や天然ガス業界の解説。科学や軍事の視点は控え目で、ややビジネス寄り。油田開発や原油取引のビジネスの現場を基礎の基礎からしっかり解説してくれる。
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池田信夫, 希望を捨てる勇気 停滞と成長の経済学

池田信夫の書き下ろし。当時のブログの内容をより深掘りしたような作品。日本経済の長期停滞の原因である正社員の既得権益がもたらす格差と財政政策の失敗に関する分析が中心で、トンデモ度は低め。全体的にネガティブ基調が過ぎる様に感じるが、出版時点の2009年の空気に引きずられている部分もあるのかもしれない。
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ポール・コリアー(著), 甘糟智子(訳), 民主主義がアフリカ経済を殺す

最底辺の10億人の続編的内容。最底辺国の独裁者の視点に立って民主主義を取り入れる際のオプションを検討する思考実験は、見事に彼らの行動原理をあぶり出しており興味深い。翻訳はあまり読みやすいものではなく、特に抽象度の高い部分はかなり苦しい。
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橘玲, 言ってはいけない 残酷すぎる真実

亜玖夢博士のマインドサイエンス入門や不愉快なことには理由があるの延長線上にある本で、脳科学や遺伝学の動向をいつも通りの語り口で伝えてくれる。読み物としてはやはり面白いのだが、まだ専門家の間でも議論があるような内容をかなり断定的に書いている点には注意が必要。
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ジョン・マクミラン(著), 瀧澤弘和(訳), 木村友二(訳), 市場を創る バザールからネット取引まで

市場の設計に関する経済学の観点からの論考。啓蒙書のためか、数式はほぼなし。著者の専門であるゲーム理論やオークション理論に重みがある印象。世界の様々な市場を題材に扱っており、机上の空論となっていないのが良い。
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仁藤夢乃, 難民高校生 絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル

高校を中退した元ギャルによる手記。時期的には、女子高生の裏社会の少し前の出版。前半の高校生時代の回想は、記憶に頼っていることもあり細かな信憑性に疑問はあるが、体験者の実感がこもっており興味深い。後半の被災地での活動のくだりは本題から外れていることもありやや蛇足か。
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カイザー・ファング(著), 矢羽野薫(訳), ヤバい統計学

いわゆる統計リテラシ本。統計学が社会問題をどのように扱っているかが垣間見える。あくまで啓蒙書なので、数学的な解説は控えめ。統計学が問題を解決した綺麗なストーリーだけではなく、人間の心理が絡んでくるがために安易に最適解を取れないといった事例も取り上げておりなかなか興味深い。