sociology

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業田良家, ゴーダ哲学堂 空気人形

あまり読んでこなかった業田良家の作品を短篇集から読み始めた。読後感が悪い作品も多いが、作品に込められた強いメッセージには心を揺さぶられるところがある。
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ポール・コリアー(著), 中谷和男(訳), 最底辺の10億人

いわゆる開発途上国よりも悲惨な状況に置かれ、成長への道筋が見えない国々の問題点を探る。紛争の罠、天然資源の罠、内陸国の罠、悪いガバナンスの罠といった典型的な問題を解説した上で、その解決策を提案していく構成。統計データによる裏付けも豊富で、読んでいて腹落ちする。個別の国の微細な議論に陥ることなく、より高い視点から問題を捉えようとする姿勢も良い。
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渡辺靖, アメリカン・コミュニティ 国家と個人が交差する場所

ゲーテッド・コミュニティ、ビッグスカイ・カントリー、メガチャーチなど、現代のアメリカの大きな問題を象徴するコミュニティへの訪問記。各コミュニティの滞在期間は短いが、その特徴はよく伝わってくる。読み物としても申し分ない面白さ。各コミュニティの総括は終章で語られるが、これは紙幅が限られていることもあってか、やや消化不良な印象。
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平康慶浩, うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ

タイトルだけを見ると今時のワーキングプア本に見えるが、中身は意外にしっかりしたビジネス書。組織内でのアピール方法や出世に繋がる仕事の仕方などサラリーマンとしての処世術を非常に率直に書き連ねているので、若いサラリーマンにはぜひ一読して欲しい。
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鈴木大介, 家のない少年たち 親に望まれなかった少年の容赦なきサバイバル

家のない少女たちの続編。今度は少年を取り上げているが、家出少年というよりは彼らが手がける裏ビジネスの方に軸足をおいており、特に裏稼業で成功した一つのグループにスポットをあてている。前作同様、インタビューの裏をどこまでとっているかはよくわからないが、週刊誌的な刺激は十分な内容。
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鈴木大介, 家のない少女たち 10代家出少女18人の壮絶な性と生

いわゆるプチ家出ではなく、様々な理由から路頭に迷うこととなった本気家出少女達のインタビュー集。壮絶な内容で興味深くもあるが、どこまでインタビュー内容の裏をとっているかはわからないので話半分で。
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八雲星次, 職業治験 治験で1000万円稼いだ男の病的な日々

高額バイトの話題でよく名前が上がるものの、その実態があまり知られていない治験。それを生業としている男の手記。とにかく楽をしたいという理由で治験生活を続けているという告白は素直過ぎてむしろ好感が持てる。一方で、厳密に科学的な手順が求められるはずの治験の末端は、かなり危ういところで成り立っているのもよく分かる。
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根本祐二, 「豊かな地域」はどこがちがうのか 地域間競争の時代

人口コーホート図と経済センサスを用いた地域分析手法の紹介。この二つの簡易な分析だけから様々な仮説が導かれるのを見るのは爽快。
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河邑厚徳, グループ現代, エンデの遺言 根源からお金を問うこと

ミヒャエル・エンデの話は枕として使われているだけで、中心はシルビオ・ゲゼルらによる自由貨幣の話題。自由貨幣の小さな成功例とメリットばかりで、欠点や批判的な意見に触れることはない。そのため、なぜそんな素晴らしい自由貨幣が限られた範囲でしか利用しかされていないかという素朴な疑問が解決しない。全体を通じて自由貨幣支持者の取材を主要な情報源としていることもあり、参考文献も挙げられておらず、根拠が不明な記述も多い。意図的かはわからないが、自由貨幣の利点と地域通貨の利点を混同して説明して...
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坂口恭平, TOKYO 0円ハウス 0円生活

思想はやや荒削りながら、隅田川のブルーシートハウスに新しい建築の姿を見出すという試みは興味深い。昨日のルポ 最底辺と同じ野宿者を扱いながらも、こちらは一転して明るい雰囲気。性格の差か、スキルの差か、著者のフィルタの差か。