sociology

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グレッグ・クライツァー(著), 竹迫仁子(訳), デブの帝国 いかにしてアメリカは肥満大国となったのか

装丁は軽めだが内容は硬派。米国が肥満社会となるまでの過程を、農業行政、ファストフード業界、食品業界、教育界と多くの視点から丹念に追いかけていく。現状に至った要因は単一のものではなく、様々な原因が絡まり合っていることがよく分かる。肥満のリスクに関する記述も十分。
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中村敏雄, 日本的スポーツ環境批判

本作の主題はスポーツ環境。中でも日本の部活環境の論考に多くのページを割いている。日本人の多くが当然と感じている部活によるスポーツ活動を客観的に見直すという視点は新鮮。部活の存在理由や公的役割が曖昧なまま、もぐらたたき的な対策だけを繰り返している現状への批判は実に的確。おすすめ。
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畸人研究学会, しみったれ家族 平成新貧乏の正体

"しみったれ家族" とは、いわゆるニュープアを拡張したような概念で、"所得に不相応な見栄を張る層" と "夜間に家族でディスカウントショップに来店する層" を合わせたもの。あまり学術的なフィールドワークをしているようには見えないので、あくまでも読み物としてどうぞ。
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マーサ・スタウト(著), 木村博江(訳), 良心をもたない人たち 25人に1人という恐怖

米国では人口の4%を占める (アジアではこれよりもだいぶ少ない) と言われるSociopath/Psychopathの実態。心理セラピストとしての経験から得られた実際のエピソードを基にしており、Sociopath/Psychopathの行動原理が非常によく分かる。また、彼ら/彼女らに振り回されないための13のルールも実に興味深い。
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山本佳世子, 研究費が増やせるメディア活用術

表題はやや誇大広告気味で、直接的に研究費の獲得に繋がる話題はほとんどなし。大半を占めるのは研究者とマスコミの付き合い方の話題。著者は日刊工業新聞に務める傍ら大学の非常勤講師も務めているが、立ち位置は完全にマスコミ寄りで、マスコミの論理を正当化するための記述が目立つ。
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川島博之, 電力危機をあおってはいけない

いわゆる脱原発論だが、自然エネルギー派ではなく、人口減により必要な電力が減っていくので石炭・石油・天然ガスで十分にまかなえるとの論。データも出自がしっかりしているものが多く、理論的なギャップも少ない。ただし、本書の対象はあくまでも電力であり、エネルギー全般を論じているわけではない点には注意が必要。数字や計算式が多い本にも関わらず縦組みになっている点だけが残念。
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オフサイド・ガールズ

女性のサッカー観戦が禁止されているイランで、それでも試合をひと目見ようとスタジアムに潜り込む女性たち。日本人の感覚では想像しにくい窮屈な世界ながらも、決して暗くなり過ぎずに女性の逞しさを前面に押し出しているので余韻は悪くない。
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中村敏雄, 出原泰明, 等々力賢治, 現代スポーツ論 スポーツの時代をどうつくるか

25年前の書籍だがまったく古さを感じさせず、現在でも通用する議論が多い。特に、出原泰明が "スポーツとクラブ" や "スポーツの社会的条件" で示したスポーツの環境を整えるための競技者の自助努力が現在でも未だ不十分なのは明らかだろう。
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美達大和, 人を殺すとはどういうことか 長期LB級刑務所・殺人犯の告白

二件の殺人により無期懲役となった著者による手記。匿名での著作であり、実在する懲役囚であるかはわからない。後半にある他の殺人犯の観察は興味深い。自分を棚に上げてという批判はあるだろうが、それを差し引いても読む価値はある。
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東海林智, 貧困の現場

貧困に陥っている人々を追いかけたドキュメンタリー。労働者側の視点に偏ってはいるものの、現場を知るための書籍としては優秀。