宮崎市定, 科挙 中国の試験地獄

様々な伝説がひとり歩きしている感のある科挙試験の実態を詳細に解説したもの。

特に末期の清朝の制度を中心に解説しているせいもあるが、科挙が恐ろしく複雑な制度であることがよくわかる。中でも特色的なのは、人間を信用しないがために生まれた不正防止の方法の数々。何重にも重ねられたチェック体制がいたずらに試験を肥大化させている原因の一つである。

また、科挙にまつわる道教思想に基づいたエピソードの数々も現代とはかけ離れた感覚があり面白い。

著者独自の考察としては、国家として教育に投資せず民間任せにした上で、最終的な試験により上澄みを掬おうとする仕組みであるとの指摘が鋭い。

少々残念だったのは、試験の主題である四書五経の中身やそれを用いた試験が確立した背景などの解説がほとんど無いこと。

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