川島博之, 「食料自給率」の罠 輸出が日本の農業を強くする

「食糧危機」をあおってはいけない以来の、世界的な食料余りのスタンスは全く変わらず。今作ではそれをさらに発展させ、日本の農業を産業して成り立たせるための方策を論じる。

端的に言ってカロリーベースの食料自給率を上げるということは、儲からない穀物の生産を無理に押し上げることであり、採算を取ることは難しい。無理に辻褄を合わせるのならば農地の大規模化を推し進めるしかないが、これはこれで政治的な理由により難しい。

となると、現実的に可能なのはオランダ型の農業となる。オランダは穀物自給率 (カロリーベースの自給率に類似) は14%に過ぎないが、純輸出額では米国を押さえて世界一となっている。日本も農業を産業として成り立たせるためには、カロリーベースの自給率はさらに押し下げ、代わりに野菜や畜産といった狭い土地で高い生産額が得られる農業に重点を置いていくしかない。

この種のカロリーベースの自給率を論じる際に必ず反対論として挙げられる食料安全保障の問題にも触れられており、委細に検討していくと現実的な脅威と言えるものではないことがよく分かる。

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