野口悠紀雄, 金融危機の本質は何か ファイナンス理論からのアプローチ

ファイナンス理論のまともな入門書。

ややもすると疑似科学扱いされがちなファイナンス理論だが、実はきちんとした科学的な学問である。その証拠に、ファイナンス理論を用いても金儲けはできないとして、ヨーロッパやアメリカの伝統的・禁欲的な大学にも受け入れられている (中には工学すらも学問として受け入れていない大学もあることに注意)。

ファイナンス理論の内容は高度ではあるが、結論は極めて常識的なものだ。詐欺や犯罪行為によらず市場平均より高い収益率を継続的にあげられるのは、他社が追随できない技術やビジネスモデルを持つ場合か、独占力を持つ場合に限られる。どちらもないのに収益が増えているとすれば、(エンロンのように) どこかがおかしいか、一時的な高収益に過ぎない。実証分析においても、市場はセミストロング・フォームで効率的 (情報が公開されてから短時間のうちに株価がそれを取り込むため、裁定機会を容易に見つけられない) だ。

マーコヴィッツの平均・分散モデルとトービンの分離定理によれば、リスク資産の適切なポートフォリオは誰にとっても同じとなる。異なるのは安全資産への投資比率だけだ。

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