言語学者が子供の言語獲得の過程を観察したエッセイ集。
子供が日本語の無声音 (濁音) と有声音 (濁音) の対応のずれに気付く様子が実に興味深い。「「は」にテンテンつけたら何ていう?」という大人にとっては簡単な質問に答えられない子供が多いという現象がある。これは種を明かすと、「か-が」、「さ-ざ」、「た-だ」が正しく無声音-有声音の関係にあるのに対し、「は-ば」が全く対応していない音であるため。テンテンの正体を正しく知っている子供こそ答えられないちょっと意地悪な質問である。ここからさらに考察を深めると、「は」は大昔は「ぱ」と発音していたという事実に行き着く。
その他、日本語ならではの拍の数え方や実は例外的なナ行の五段活用など、大人にとっては当たり前の日本語の常識を子どもたちが次々とひっくり返す過程は痛快。
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