深木章子, 鬼畜の家
探偵による関係者への事情聴取の形式は新鮮。その形式を活かしたトリックも良いが、さすがに少々わざとらしいか。
マット・リドレー(著), 大田直子(訳), 人類とイノベーション 世界は「自由」と「失敗」で進化する
人類の生活を豊かにするイノベーションがどのような仕組みで起きるのかを豊富な事例を用いて解説する。前半はエネルギー、公衆衛生、輸送、食料といった生活を支える基礎的な分野のイノベーションの事例を取り上げ、後半はそれらの事例の共通項からイノベーションの本質を論じる。
イノベーションには “やってみて学習する” という泥臭い過程が欠かせず、コストや規制により繰り返しの実験が難しい分野でイノベーションが起きることはない。原子力発電がその代表例である。
イノベーションは都市 (特に自治都市) のイノベーションの生態系の中で発生する。イノベーションはアイディアとアイディアの出会いによって引き起こされる。他の業界で展開中だったアイディアを利用して困難が克服されることも多い。決してひとりの天才のひらめきがイノベーションを起こすのではない。イノベーションを起こしたとされる人物がいなくとも、他の人物によって同様のイノベーションが引き起こされたであろう事例は珍しくない。
知的財産権はイノベーションを阻害する。特許がイノベーションの促進に役立つという証拠も、特許で守られていない分野にイノベーションが少ないという証拠もない。イノベーションは自由から生まれる。
五十嵐律人, 法廷遊戯
ミステリの登場人物だからと言ってしまえばそれまでだが、ロースクールの学生 (後に弁護士) ながらまったく倫理観のない主人公とヒロインに感情移入できないのが苦しい。物語が進むにつれて少しづつ彼らの過去が明らかにされていくが、どんどん印象が悪くなっていく。ピカレスクロマンと言えるまで振り切ってくれればまだ救いようもあるのだが。
エドワード・ハリソン(著), 長沢工(監訳), 夜空はなぜ暗い? オルバースのパラドックスと宇宙論の変遷
宇宙が無限に広がっているのならば、素朴に考えると全天のすべてが星に満たされているはずである。しかしながら現実の夜空は闇に覆われており、星はその中に散りばめられているに過ぎない。これが有名なオルバースのパラドックスである。
このパラドクスへの回答を得る道のりは宇宙論の歴史そのものであり、それぞれの時代の最新の宇宙の解釈が注ぎ込まれてきた。原題の基準でみると珍妙な理論も多いが、その時代背景や観測技術の限界を考慮するといずれも一応の筋は通ったものと言える。