グレゴリー・クラーク(著), 久保恵美子(訳), 10万年の世界経済史 (上) (下)

日本語版の表題は “10万年の世界経済史” となっているが、10万年というbig historyよりも、産業革命の背景やその影響が主題。原著の表題の “A Farewell to Alms” の方が著者のメッセージを正しく伝えているように感じる。ダジャレだが。

上巻はマルサスの罠による産業革命以前の停滞が中心。世界各国の人口、出生率、死亡率、生活水準、技術水準、実質賃金の豊富な推移データを元に、短期的な所得の増大が常に人口の増大によって打ち消されてきたことを示す。

下巻では、なぜ18世紀のイギリスで産業革命が始まったのかという問いに取り組む。先行研究から様々な要因が取り上げられるものの、これといった決定打が示されないのは残念なところ。実際は様々な複合要因なのだろうけれど。

全体として読み応えは十分。データによる裏付け重視なので読み物としては今ひとつテンポが悪いが、マルサスの罠の実態についてしっかり勉強したい向きには間違いなくおすすめできる。

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