紀田順一郎, 蔵書一代 なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか

田舎に大きな書庫を備えた家を建てて好きな本に囲まれて暮らすという夢は、すべての蔵書家が一度は思い描いたことがあるだろう。そんな暮らしを一度は実現しながら、家族や自身の健康などの理由で捨てざるを得なくなったのは心情を察するに余りある。さらにその際に3万冊超の蔵書を手放さざるを得なくなったとなると、自らの半身をもぎとられたようなという比喩では物足りないだろう。

そんな著者の体験を踏まえ、さらに個人蔵書の受難の時代背景や名だたる蔵書家たちのエピソードを折り込み、蔵書論ともいうべき作品に仕上がっている。自身の「最期の蔵書」を考えるきっかけともなるだろう。

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