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田端到, 図解 プロ野球「新・勝利の方程式」 「送りバント」と「守備力」が優勝を決める

統計分析に関する部分はほとんどが既存のセイバーメトリクスの技法をそのまま適用しているだけで新味はあまりない。また、著者は統計学の知識がないため、前著同様に極端にサンプル数の少ない事例で断定的な解釈をしてしまっている箇所が多く、有意水準などは一切出てこない。落合監督の先発ローテーションなど、所々に面白い観点はあるのだが、思いつきレベルで終わっており、まともな検証までたどり着いていないのが残念。
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トム・ヴァンダービルト(著), 酒井泰介(訳), となりの車線はなぜスイスイ進むのか? 交通の科学

ちょっとあざとい新書のようなタイトル (原題は "Traffic: Why We Drive the Way We Do (and What It Says About Us)") の交通工学の本。ドライバーの心理に根ざした内容が多く、同じ "トラヒック" でありながらも、自分の専門とする通信トラヒック工学とは全く異なるアプローチが必要となるのが興味深い。
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ウィリアム・パウンドストーン(著), 松浦俊輔(訳), 天才数学者はこう賭ける 誰も語らなかった株とギャンブルの話

クロード・シャノンやエドワード・ソープといった天才数学者が如何にして最適な裁定取引を実現するに至ったかを追った本。数式はほとんどなく、どちからといえばドキュメンタリーといった体裁だが、現代的な金融工学に繋がる流れはよく捉えられる。翻訳が今ひとつで少し読みにくいが、それを差し引いても読む価値のある本だと思う。
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平林純, 論理的にプレゼンする技術 聴き手の記憶に残る話し方の極意

前著の理系のためのプレゼンのアイディアが比較的良かったのでこちらも読んでみた。本当に基礎中の基礎からの本だが、意外と出来ていないことが多いのに気付かされる良書。にしかわたくのイラストも面白い。
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安村敏信, 美術館商売 美術なんて…と思う前に

板橋区立美術館の学芸員の方の著作。美術館、特に日本の古美術品となるとかなり敷居が高く、なかなか訪れる機会もないのだが、その中の人がどんな工夫をして客を呼び込もうとしているのかがよくわかる。もっとも、ここまで高い意識を持って、一般の人々への普及を心がけている人がどれだけいるのかはわからないが。あまり食わず嫌いをせずに、たまには美術館に足を運んでみようかと思わせる一冊。
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小島寛之, 世界を読みとく数学入門 日常に隠された「数」をめぐる冒険

気軽に読める数学本だが、ただの雑学本よりはもう少しがっちりした内容。数式もそれほど端折られていないので、まじめに読むと少し骨がある。
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香西秀信, 論より詭弁 反論理的思考のすすめ

理工系な職場にいると、ついつい論理的思考に偏ってしまうが、それを自覚するのには良い本。本書は論理的思考を真っ向から批判し、レトリックを用いた "人に訴える議論" を論じる。その技巧だけを見ると当たり前のことばかりにも見えるが、論理的思考にどっぷりと浸かっていると、その使用をためらわれるものも多い。
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大塚英志, 「彼女たち」の連合赤軍 サブカルチャーと戦後民主主義

連合赤軍の女性たち、特に永田洋子を戦後のサブカルチャーの文脈から読み解こうという試み。あくまでサブカルチャー側からの視点なので、どうしてもこじつけや記述の薄さを感じてしまう部分が多い。また、後半は連合赤軍よりも、オウム真理教、少女まんが、宮崎勤などの雑多な論考 (の既発表文書の収録) なので、連合赤軍よりもサブカルチャー一般に興味のある人向けか。
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松島悠佐, 戦争の教科書

"戦争の" 教科書というよりも、"日本の安全保障の" 教科書といった色が濃い。なぜ戦争が起きるのかというメカニズムに始まり、戦争が起きうる可能性を踏まえた上で日本がどのように備えるべきかまでが良くまとまっている。筆者独自の新規性はあまり見られないものの、戦争の本質や自衛隊のあり方を考えるための入門書としてはおすすめできる。
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ヴァレリー・ラルボー(著), 岩崎力(訳), 罰せられざる悪徳・読書

教養人となるための読書論。読書との出会いから教養あるエリートとなるまでの典型的なコースが示されているのだが、その中で挙げられている訪れやすい困難や誘惑は実に身につまされる。稀覯本や初版本の収集といった愛書趣味、博識への傾倒、虚栄心を満足させるための批評などの様々な誘惑に捕らえられていないか、自身の読書スタイルを見直すきっかけには良い一冊。おすすめ。